Research Abstract |
背景:タンパク質を網羅的に同定・定量する際には,ナノ液体クロマトグラフィー-質量分析法(nanoLC-MS/MS)を用いたショットガンプロテオミクスを用いるのが一般的である.ヒトタンパク質間の発現量の差は最大で10^6倍あり,また,ショットガンプロテオミクスでは試料中のタンパク質を断片化して測定するため,試料中の複雑性が非常に高くなる.そのような試料の特性に由来する問題点のため,同定できるタンパク質の網羅性が低いのが現状である.そこで本研究では,分析化学的手法,情報学的手法を駆使し,試料中の複雑性,濃度差の問題を解決し,同定効率を改善することを目的としている. 研究実施状況:本年度は,以下の2点に関して研究を行った. 1.モノリス型シリカカラムの作製 京都工芸繊維大学のモノリス型シリカカラム作製方法を基に,カラム作製を行った.反応条件の検討を行い,非常に,作製が困難と言われていた,分離能の高いモノリス型シリカカラムの作製に成功した. 2.モノリス型シリカカラムの生物試料への応用 350cmのモノリス型シリカカラムを用いて大腸菌細胞抽出物を分析し,LCにおける分析時間,導入量などの分析条件を最適化した結果,1分析で大腸菌発現プロテオームを全て同定できる手法を開発した(Analytical Chemistry誌に掲載).次に,モノリス型シリカカラムのヒト試料への応用を行った.HeLa細胞を試料とし,リン酸化ペプチド濃縮を行い,350cmのモノリス型シリカカラムで分析し,分析条件を最適化した結果,24時間の分析で,約11,000個のリン酸化ペプチドを同定することに成功した.本手法を用いることで,必要とする試料量が最大で従来の約400分の1,かつ分析時間も最大で約40分の1に短縮することに成功した.
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