2012 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイドβのC末端領域の立体構造解析に基づいた凝集阻害剤の開発
Project/Area Number |
10J04068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 瑞穂 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / オリゴマー / ジアミノピメリン酸 / マイクロ波 / 天然フラボノイド / マイケル付加 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)の原因物質と考えられている42残基のアミロイドβ(Aβ)は凝集することで神経細胞毒性を示す.近年,準安定な凝集中間体であるAβ42オリゴマー(2-4量体)が毒性本体であることが指摘されており,オリゴマーの構造解析はAβ42の毒性発現メカニズムを解析する上で重要と考えられる.Aβ42の高いオリゴマー形成能は,C末端領域におけるターン構造やβ-シート構造の有無に起因している.本研究では,特にAβ42の二量体に着目し,C末端領域の構造解析を目的として二量体の合成を行った.さらに,Aβ42の凝集を阻害する化合物の探索を,天然フラボノイドを中心に行い,その作用機序がC末端領域に関与しているかどうかを検討した. 前年度までに合成が完了した28番目のリジン(Lys28)側鎖にアジド基を持つAβ42と,Lys28をプロパルギルグリシンに置換したAβ42を用いて,Huisgen反応によりAβ42の二量体の合成を試みたが,反応中のAβ42変異体の凝集を抑えることが困難であった.そのため,前々年度に検討していたジアミノピメリン酸をリンカーとして30番目のAla残基で架橋する合成法について再検討した結果,マイクロ波技術を取り入れることによって二量体の合成に成功した. 一方,天然フラボノイドによるAβ42凝集抑制に重要な構造因子ならびにAβ42との作用部位を検討するため,複数のカテコール系および非カテコール系フラボノイドのAβ42凝集抑制能を調べた.その結果,カテコール系フラボノイドはタキシフォリンと同様にLys残基とマイケル付加体を形成することで凝集を抑制する一方,カテコール構造をもたない平面性が高いフラボノイドは,Phe残基との芳香環どうしのπ/πスタッキングを介して抑制している可能性が高いことが明らかになった.本結果は,フラボノイドによるAβ42の凝集抑制機構を明快に説明できるだけでなく,その作用部位がC末端領域ではないことを示唆するものである.
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