2011 Fiscal Year Annual Research Report
短時間の電気的感覚情報入力と運動の組み合わせによる学習促進効果
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10J04098
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上原 信太郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 体性感覚 / 運動技能 / 運動学習 / 神経修飾 / 神経可塑性 / 機能結合 / 皮質-皮質下回路 / 機能的磁気共鳴画像法 |
Research Abstract |
初年度は主に行動学的実験を用いて体性感覚入力が直後の手指巧緻運動技能に及ぼす影響、更にはより長期的な学習効果に及ぼす影響を検証した。その結果、体性感覚入力による介入は手指の運動量の減少から見られる効率的な制御を導きながら、停滞していた運動技能を即時的に向上させる効果が明らかとなった。また、介入と運動を日々繰り返すことで、5日間の継続的練習では明らかな向上が見られなかった学習の停滞状態に対して、更なる段階的な技能向上、つまりは学習促進を導けることが明らかとなった。 では、停滞した運動技能の更なる向上の背景にはどのような脳内神経基盤が関わっているのだろうか。昨年度は機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いてその解明に取り組んだ。介入前の運動時と介入によって技能向上が見られた運動時の脳活動を計測し、両者の比較検証を行った。その結果、運動関連領域内におけるBOLD信号量には両者の差異は認められなかったものの、信号値の挙動(相関関係)に着目すると、介入後の運動時には一次運動感覚野を中心とする皮質感覚運動領域と小脳(小脳中部)・基底核(被殻)の皮質下領域との間の相関関係が強くなっていることが明らかとなった。したがって、停滞していた運動技能の改善には、運動・感覚の一次的処理に関わる皮質感覚運動領域と、運動技能学習に中心的に関わる基底核(被殻)や身体末梢からの感覚情報入力の求心経路である脊髄小脳との間の領域間機能結合の強化が関わっている可能性が示された。以上より、事前に施す感覚入力介入が運動実行に関わる脳領域間結合を強化する方向へと作用し、その結果として効率的制御、運動技能向上といった行動学的恩恵を導いた可能性が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の行動学的実験と翌年度の機能的核磁気共鳴画像法を用いた実験は申請時の計画に則した内容となっている。従って、当該研究の目的達成に向けておおむね順調に研究を推進できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき、昨年度中に得られたデータの詳細分析を進めるとともに、異なる神経生理学的実験手法を駆使しながら神経メカニズムの解明に迫っていく予定である。
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Research Products
(3 results)