2010 Fiscal Year Annual Research Report
経済実験を用いた排出権取引市場の研究 : 投資行動と市場機能の分析
Project/Area Number |
10J04131
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 健太 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 排出量(排出権)取引制度 / 実験経済学 / 気候変動対策 / オークションメカニズム |
Research Abstract |
本研究では排出権取引制度(許可証取引制度)のより現実的な状況を仮定した場合に起きうる問題点や課題を経済実験により明らかにし、将来的な制度設計に貢献することを目的としている。初年度では排出権取引制度を経済実験により分析するための準備、理論的な可能性のサーベイを行い、実際に取引メカニズムの比較実験を行った。とくに現状の取引メカニズムに近似するダブルオークションと代替可能性が最も高いユニフォームプライスオークションとの比較実験を行い、現状の取引メカニズムの問題点(取引自体の正確さ、投機的行動の影響など)を明確にすることができた。また排出権取引制度と同様の構造を持つ、漁獲枠取引制度(ITQ制度)を実例として、資源・環境分野における許可証取引制度のもとで、制度の参加者が環境と経済を両立できるように適切な投資行動を行うかどうか2段階の意思決定による新規性の高い経済実験を行った。実験、分析の結果、許可証取引や排出権取引の取引状況が市場の参加者の投資行動に大きな影響をあたえることを明確にした。また分析の結果、許可証取引制度において排出権などの許可証の取引価格を安定化させる施策が許可証や排出権取引制度にとって重要であることを示唆することができた。これらの研究結果により、現状の排出権取引制度の課題を見つけ出すことに成功し、最終的な目標である、より優れた排出権取引制度の制度設計の構築に大きな意義のある進捗を得られたと考える。
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Research Products
(8 results)