2011 Fiscal Year Annual Research Report
Tetraodon属魚類の塩分適応に関わる分子進化学的研究
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10J04168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 洋治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Tetraodon / 分子系統解析 / 浸透圧調節 / リアルタイムPCR / ミオシン重鎖遺伝子 |
Research Abstract |
われわれはTetraodon属魚類17種を対象に、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の16S rRNA遺伝子およびシトクロムb遺伝子の塩基配列に基づき分子系統解析を行い、淡水起源の共通祖先からまず、アジア淡水域系統とアフリカ淡水域系統が分岐し、次いでアジア淡水域系統が汽水域にも生息域を拡大したことを示唆した。さらに、塩分耐性試験の結果、アジア淡水系統とアジア汽水系統の魚種間では塩分耐性が明確に異なることを示した。本年度はミオシン重鎖遺伝子(MYH)ファミリーに着目して研究を行い、塩分依存的に発現変動するMYHを探索することを目的とした。 アジア汽水域系統ミドリフグT.nigroviridisを対象に、2週間程度、25℃、淡水および100%海水で飼育した後、両試験区の試料魚各5尾から筋肉を採取した。採取した筋肉から全RNAを抽出した後、市販のキットを用いてcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型としてリアルタイムPCRによりトラフグTakifugu rubripesで同定されたMYH_<M1034>およびMYH_<M2528-1>の発現変動を調べた。その結果、MYH_<M1034>については淡水および100%海水の両試験区間で有意な違いはみられなかったが、MYH_<M2528-1>の発現量は100%海水試験区よりも淡水試験区で約2倍多かった。今後,in situ hybridizationを行いMYH_<M2528-1>の筋組織中の発現局在および0~100%の種々の塩分での発現様式を調べる予定である。 一方で、昨年度、タイの3地点およびマレーシアのボルネオ島3地点の計6地点で採取したミドリフグおよび近縁種サバヘンシスTetraodon sabahensisにつきmtDNAおよび核遺伝子を対象に分子系統解析を行い、形態的特徴や生息域との関係を調べた。mtDNA全長塩基配列に基づき作成した分子系統樹では、大斑点ミドリフグのグループは他の試料とは明確に分岐し、その遺伝的距離は小班点ミドリフグ中とT.sabahensis間のものより大きいことが示された。また、核遺伝子RAG1に基づき作成した分子系統樹でも、mtDNA全長塩基配列に基づき作成した分子系統樹とほぼ同様であることが示された。さらに両系統樹を比較した結果、T.sabahensisについては、同所的に2つ以上の系統が生息する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はミオシン重鎖遺伝子(MYH)ファミリーを対象に、淡水および100%海水の異なる塩分で発現変動を示すMYH_<M2528-1>をミドリフグ筋肉中に見出した。 また、タイの3地点およびマレーシアのボルネオ島3地点の計6地点で採取したミドリフグおよび近縁種サバヘンシスT.sabahensisにつきmtDNAおよび核遺伝子を対象に、詳細な分子系統解析を行なうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きMYH_<M2528-1>を対象に,in situ hybridizationを行いの筋組織中の発現局在および種々の塩分での発現変動を調べる。また、本年度入手することが困難であったアジア淡水域系統メコンフグTetraodon cochinchinensisを入手することができたことから、メコンフグについても同様に解析を行なう予定である。
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Research Products
(3 results)