2012 Fiscal Year Annual Research Report
Tetraodon属魚類の塩分適応に関わる分子進化学的研究
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10J04168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十嵐 洋治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Tetraodon / 分子系統解析 / ミトコンドリアDNA / 16S rRNA / ミオシン重鎖遺伝子 / in situハイブリダイゼーション |
Research Abstract |
本年度はTetraodon属魚類の系統類縁関係をさらに詳細に調べるために、既報のフグ科魚類のmtDNA全長塩基配列に基づき作製した分子系統樹と、先に我々が決定した塩基配列を合わせてsupermatrix解析を行った。その結果、T. cutcutiaを除き、アジア淡水域、アジア汽水域、アフリカ淡水域の3系統に分類された。すなわち、Tetraodon属魚類が単系統では無いことが示され、それら3系統の分子系統関係は属レベルで異なる可能性があることが示唆された。 続いて、タイ東部で採取されたアジア淡水産のTetraodon属魚類について分子系統解析を行った。全ての試料魚はT. cohinchinensisとされていたが16S rRNAの部分塩基配列(573bp)を決定した結果、その塩基配列はT. cohinchinensisのものとは異なり、解析した12個体中2個体はT. abeiもしくはT. baileyiの配列と同一であった。さらに、その形態的特徴からT. abeiであると同定された。決定した部分塩基配列に基づき分子系統樹を作製した結果、全ての試料はアジア淡水域系統に分類された。さらに系統樹とアジア淡水域系統の各魚種の生息域の関係から他の10個体はT. cambodgiensisであると推定された。 最後に、昨年度同定した塩分依存的に発現変動を示すミドリフグT. nigroviridisのミオシン重鎖遺伝子(MYH)アイソフォームであるTnMYH_<M2528-1>について、in situハイブリダイゼーションによりその発現分布を調べた。本遺伝子は筋隔膜中の細い筋繊維で強い発現が見られたが、既報のトラフグMYH_<M2528-1>の発現分布とは異なり速筋内部には観察されなかった。トラフグMYH_<M2528-1>は成長に関わると報告されており、ミドリフグにおいても本遺伝子は細い筋繊維で強い発現が見られたことから同様の働きをする可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Tetraodon属魚類および関連フグ科魚類の分子系統関係をsupermatrix解析により詳細に解析した。その結果、Tetraodon属魚類が単系統では無いことが示され、それら3系統の分子系統関係は属レベルで異なる可能性があるという大変興味深い結果が得られた。 さらに、現地採集したTetraodon属魚類を対象に行った分子系統解析では、DNA分析が形態形質の酷似するTetraodon属魚類の分類に有用であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
塩分依存的に発現変動を示すTnMYH_<M2528-1>について、in situハイブリダイゼーションによりその発現分布を調べた結果、既報のトラフグMYH_<M2528-1>の発現分布とは異なり速筋内部には観察されなかった。トラフグMYH_<M2528-1>は成長に関わると報告されており、ミドリフグにおいても本遺伝子は同様の働きをする可能性が示された。しかしながら、環境中の塩分と筋成長の関係については、筋成長に関連する遺伝子のmRNA発現量等を指標として、今後詳細に検討する必要があると考えられる。
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Research Products
(3 results)