2011 Fiscal Year Annual Research Report
無染色生細胞の"その場"内部観察を可能とする新規顕微鏡の開発
Project/Area Number |
10J04235
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 宣行 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光熱変換 / 熱レンズ分光法 / 熱レンズ顕微鏡 / 紫外光 / イメージング / 反射対物レンズ |
Research Abstract |
本研究では、無染色の生細胞の内部観察を可能とするような顕微装置の開発を目的としており、その有力候補として光熱変換現象の一つである熱レンズ分光法を利用した画像化装置の開発を行っている。これまでに、生細胞として酵母菌を利用し、無染色の生細胞を画像化することが可能であることを実証済みである。本年度は、目標値として挙げた空間分解能:0.1μm(平面)×0.3μm(深さ)の達成へ向け、熱レンズ現象の最適観測技術の確立を目指し取り組んできた。まず、平面方向の分解能改善のため、装置光学系の改良と、本研究における装置系での熱レンズ信号画像取得最適手順確立を行なった。昨年問題として生じていた、画像に"歪み"が生じる事について、その歪みを減少させることが可能な装置系を用い、実際に細胞として酵母菌を試料としての測定を行い、熱レンズ画像の取得に成功した。 深さ方向の分解能についてはこれまでデータが取得できていなかったため、新たに測定プログラムを作成することで、深さ方向の位置をずらしながら二次元平面画像を連続的に取得可能にした。粒径7μmのポリスチレン微粒子を用い、その粒径よりも大きな範囲の深さ方向依存の画像取得に成功した。その結果、現在の装置系をそのまま用いた場合、測定手順改良や光学系の改良、高倍率対物レンズの使用だけでは、深さ方向の分解能の目標値達成が難しい事が判明した。 現在の装置系と組み合わせ可能であり、特に深さ方向の分解能改善が期待できる手法の調査を行なった。その結果、二色二光子吸収の利用により、深さ方向の分解能改善が期待できると判断した。新たな手法を組み合わせた装置系の開発は、当初目標として掲げた分解能を達成するために非常に重要である。二色二光子吸収を組み合わせた装置構成を決定した。現在、その新しい装置系の構築を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初目標としていた装置性能について、この達成のためにはレーザー光集光条件の最適化や高倍率対物レンズの使用だけでは難しいことが判明し、既存の装置系に対し新たな原理を組み合わせた装置の開発が必要となったためである。既にその新装置系構築に向け動いてはいるが、申請書作成時には予定していなかった方向であるため、(3)やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、現行装置系に二色二光子吸収を組み合わせた装置開発を行なっていく。現在のシステムの問題点として、分解能、特に深さ方向の分解能が不足している点、紫外レーザー光を使用する事による細胞へのダメージの可能性がある点、が挙げられる。二色二光子吸収を組み合わせることのメリットは、(1)非線形光学現象であることによる、高分解能化、特に深さ方向の高分解能化、(2)励起用レーザー光波長を長波長にすることが可能、の二点である。現在は励起光源として波長260nmのレーザー光を利用しているが、これを波長780nmと390nmのレーザー光に変更できるため、細胞へ与えるダメージの減少を期待できる。
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