2010 Fiscal Year Annual Research Report
立体規則性に起因する温度応答性高分子の相転移構造解析と機能性キラル認識界面の創製
Project/Area Number |
10J04375
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
井戸田 直和 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体機能材料ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 温度応答性高分子 / 立体規則性 / ポリマーブラシ / リビングラジカル重合 / 表面ぬれ性 / 磁気緩和時間 / 細胞接着性 |
Research Abstract |
本年度は,本研究の基盤技術となるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)ブラシ表面の立体構造の複合制御を検討し,この手法を用いてPNIPAAmブラシにおける表面ぬれ性評価や水和解析から立体規則性が与えるPNIPAAmブラシの温度応答特性の解明を進めた。立体規制触媒としてY(OTf)_3を用いる事で高いisotactic選択的な表面開始重合が進行し,Y(OTf)_3量の調節により立体規則性,重合温度やモノマー濃度の調節により分子量,不活性シランとの混在比によりグラフト密度の複合的制御を実現した。立体規則性の違いは表面ぬれ性への大きく影響を与え,従来のPNIPAAmブラシとは異なる相転移挙動を示した。表面ぬれ性への影響を詳細に解析するため,核磁気共鳴(NMR)測定による水の緩和時間測定からPNIPAAmブラシ周辺の水和解析を検討した。立体規則性を制御したPNIPAAmブラシでは,スピン-格子緩和時間(T_1)とスピン-スピン緩和時間(T_2)とで異なる変化傾向を示しており,表面ぬれ性では確認できなかった特異的な水和状態を呈している事を見いだした。このような立体構造と表面物性(特にポリマーブラシの立体規則性)との相関については,過去に報告例がなく,他の構造因子と複合制御することで多彩な表面設計が可能となる事を示した。構造制御したPNIPAAmブラシ表面のバイオマテリアル応用を目指し,細胞培養基材としての評価を検討した。立体規則性を制御したPNPAAmブラシ表面では,培養温度37℃において市販培養皿と同程度の細胞接着性を示す一方で,培養温度25℃へ低温処理する事で完全ではないが細胞の脱着挙動が観察された。表面ぬれ性の結果から,25℃における立体規則性を制御したPNIPAAmブラシ表面は脱水和状態であるにも関わらず細胞接着性が低下した事から,疎水性相互作用以外の生体分子-PNIPAAmブラシ間相互作用が変化している可能性を示した。これらの結果は,前述した表面解析との相関を明らかにすることで生体分子の機能を制御できる材料表面の創製へ繋がると期待される。
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