2011 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類における色覚の適応的意義 : 色覚の基本特性と社会的機能
Project/Area Number |
10J04395
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平松 千尋 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 性格関連遺伝子 / 遺伝子多型 / オマキザル / 素材質感知覚 |
Research Abstract |
物体の視覚的認知や、社会性が霊長類でどのように進化してきたかを遺伝子レベルから個体の行動レベルの方法論を用いて調べることを目的として研究を進めた。 遺伝子実験においては、性格関連遺伝子の一つと考えられているアンドロゲン受容体の多型が新世界ザルではどのように分布しているかを明らかにするため、同大学、野生動物研究センターの村山研究室に保存されている17種の新世界ザル約100個体のDNAサンプルを用いて調べた。その結果、オマキザルとヨザルにそれぞれ2種類の多型が見つかったが、その他の種には多型がみられなかった。類人猿や旧世界ザルでは多くの多型が見つかっているが、調べた中で新世界ザルにはあまり多型がないということが明らかとなった。 視知覚の実験としては、ヒトとオマキザルが視覚的にどのように素材質感を知覚しているかを調べ比較した。金属、セラミック、ガラス、石、樹皮、木目、皮革、布、毛という9つの素材カテゴリの画像刺激を用いて見本合わせ課題をおこなった。オマキザルは、金属と毛をヒトと同様にカテゴリに般化することができたが、その他のカテゴリについてはヒトのように分類しなかった。課題の成績と画像解析を合わせた結果、オマキザルは画像の高空間周波数情報を主に利用して分類したのに対し、ヒトは輝度ヒストグラムの統計量を主に用いて分類していたことが明らかとなった。また、ヒトでは、どちらも木を連想させる樹皮と木目、どちらも光沢があるガラスと金属など、意味論的に近いカテゴリを混同しやすい傾向があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子解析結果については、新世界ザルのアンドロゲン受容体遺伝子の多型が旧世界ザルとは異なり多型が少ないという新たな知見を得ることができた。素材質感知覚については、ヒトとオマキザルとでは、共通しているカテゴリとそうでないカテゴリがあり、視覚的弁別に使っている手がかりも異なるということを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アンドロゲン受容体遺伝子の多型の頻度がなぜ新世界ザルと旧世界ザルで大きく違うかは、遺伝子構造や集団のサイズなどが関連していると考えられるがはっきりとした理由はわかっていない。今後、塩基配列の解析により遺伝子構造と多型の有無との関連性を調べ、多型がみつかったオマキザルを対象として行動との関連を調べていく予定である。視知覚の実験については、色覚型が異なるオマキザルとリスザルを対象として、顔色変化の認知実験を進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Book] Polymorphic color vision in primates : evolutionary considerations In : Post Genome Biology of Primates(Hirai, H., Imai, H.and Go, Y.eds.)2010
Author(s)
Kawamura, S., Hiramatsu, C., Melin, A.D., Schaffner, C.M., Aureli, F., Fedigan L.M.
Total Pages
28
Publisher
Springer