2012 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類における色覚の適応的意義:色覚の基本特性と社会的機能
Project/Area Number |
10J04395
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平松 千尋 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 色覚 / 遺伝子多型 / 個体差 |
Research Abstract |
霊長類における3色型色覚の適応的意義を多面的に理解することを目指し、主として3色型色覚であるヒト、2色型色覚と3色型色覚個体が混在するフサオマキザルを対象として比較認知実験をおこなった。本年度は、3色型色覚の進化によって他個体に検出可能となり、社会的コミュニケーションを促進していると考えられる、赤方向の顔色の変化検出に着目した。タッチパネルディスプレーに、同種他個体の目の周辺や鼻の色を、赤または青方向に変化させた顔画像を、色変化のない顔画像とともに呈示し、色変化のない顔画像を正確に選択することができるかを調べた。その結果、オマキザルにおいては、3色型色覚個体が顔色の赤方向の変化に青方向よりも敏感である可能性は低いことが示唆された。しかし、赤、青どちらの変化でも、鼻よりも目の周辺の色変化に敏感であり、他の霊長類で指摘されているように、オマキザルにおいても、目は顔のパーツの中で注意を惹きつける部分であることが示唆された。ヒトを対象とした同様な実験においては、目の周辺では赤方向の変化、鼻では青方向への変化がより敏感に検出された。このことは、ヒトでは、普段起こらない色方向への変化に注意が促された可能性が考えられる。今後、どのような感情や健康状態の変化に伴って、どのような顔色の変化が実際に起こっているかを調べることで、本実験の意義がより明らかになると考えられる。 また、認知や行動の個体差に影響を与えると考えられる遺伝子多型について調べたところ、新奇性探究との関連が指摘されているドーパミン受容体D4遺伝子や、愛着や共感、向社会性の個体差にかかわっていることが指摘されているオキシトシン受容体遺伝子の多型が、新世界ザルにおいても存在することが明らかとなった。遺伝子多型と、行動や生理学的指標の個体差との関連を明らかにすることによって、霊長類における行動や認知の個体差の重要な知見となると考える。
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Research Products
(6 results)
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[Book] Chapter 7 in Post Genome Biology of Primates2012
Author(s)
Kawamura, S., Hiramatsu, C., Melin, A., Schaffner, C., Aureli, F. Fedigan, M.
Total Pages
28
Publisher
Springer
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[Book] Capter 13 in Evolutionary Biology : Mechanisms and Trends2012
Author(s)
Melin, A., Hiramatsu, C., Fedigan, L., Schaffner, C., Aureli, F. Kawamura, S.
Total Pages
17
Publisher
Springer
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