2011 Fiscal Year Annual Research Report
内戦以降のスーダンにおける予言の流通と新たなリアリティの出現に関する人類学的研究
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10J04423
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
橋本 栄莉 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 南スーダン / 歴史 / 予言 / 経験 / 紛争 / 平和構築 / 人類学 / 民主主義 |
Research Abstract |
平成23年度に実施した研究の内容と成果は次の2点に大別することができる。(1)日本における文献研究(平成23年4月-10月)によって得られた本研究課題を達成するためのアプローチ方法の検討、(2)南スーダンにおける長期現地調査(平成23年10月-3月)によって得られた具体的なデータの収集と分析である。 (1)の内容と意義は次の通りである。まず、投稿した研究論文では、東アフリカの予言者研究の先行研究の問題点を指摘し、予言と人々の現実構成のありかたを検討することで、今後の研究にとって重要となるアプローチ方法を提示した。日本文化人類学会の学術大会においては、平成22年度に南スーダンで行った長期現地調査の内容を整理・分析し、発表を行った。この発表では、南スーダンの独立を決定する住民投票の際に、人々がどのように予言について語り、自国の「民主化」を経験しているのかということに焦点を当てた。これにより、本研究が課題として掲げている、予言の流通と政治制度の変化との関係について考察するための資料を提示することができたと考える。 (2)内容と意義は次の通りである。南スーダンの首都ジュバと東部ジョングレイ州において、頻発する民族集団間の報復闘争と予言との関係についてインタビューを行なった(平成23年12月-平成24年3月)。調査中に発生した報復闘争の情報を国際機関、政府関係者、避難民などさまざまな立場にある人々からの語りを収集することによって、本研究の課題である予言と人々の歴史観の多様性を明らかにするための資料を得ることができた。 以上のことから、平成23年度に行った日本における文献研究、南スーダンにおける現地調査では、本研究の研究課題に基づいた調査を行うことができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の達成度は、文献調査・現地調査共に問題なく進展している。また、スーダン、南スーダンにおける社会変化に人々と共に立ち会う時期に調査を行なったことで、本研究課題に対して想定していたよりも多くの知見を得ることができた。したがって、現在までの研究課題の達成度は当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、文献研究と先行研究に関する分析を中心に、これまで現地調査によって得た資料をそうした研究と合わせて整理・分析していく必要がある。その上で、本研究課題をさらに推進してゆくための補完的な短期現地調査を行う必要がある。これらの作業を通じて得た成果を学会発表や論文を通じて発表し、多くの人々の意見を本研究課題に取り入れてゆくことによって、本研究の意義を深めてゆきたい。
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Research Products
(2 results)