2011 Fiscal Year Annual Research Report
血管異常収縮の原因分子である新規スフィンゴ脂質の産生メカニズムの解明
Project/Area Number |
10J04493
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
高田 雄一 山口大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | スフィンゴ脂質 / 活性酸素 / マクロファージ / 血管異常収縮 |
Research Abstract |
本年度は、血管異常収縮の原因分子であるスフィンゴシルポスホリルコリン(SPC)が、活性酸素の一種であるOHラジカル依存的に、スフィンゴミエリン(SM)から産生されることを、分子・細胞レベルで証明するための研究を行い、以下の成果を得た。 1.分子レベル:OHラジカル依存的なSPC産生が特異的な反応であるかどうかを検討し、以下の結果を得た。 (1)OHラジカル以外の代表的な活性酸素(窒素)種(パーオキシナイトライト、一重項酸素、スーパーオキシドアニオン、一酸化窒素、パーオキシラジカル)をSMに作用させた後、反応溶液中のSPC量を質量分析計で測定した結果、パーオキシラジカルに極僅かなSPC産生作用があるものの、その他の活性酸素(窒素)種にはほぼSPC産生作用が無いことが確かめられた。 (2)SMの分解産物として、SPC以外にスフィンゴシン-1-リン酸(SIP)やスフィンゴシン(SP)が考えられたので、質量分析計による測定を行ったところ、SIPとSPはほぼ測定されなかった。 以上より、OHラジカル依存的なSPC産生は特異的な反応であることが、強く示唆された。 2.細胞レベル:本研究では、SPC産生メカニズムの基盤として、マクロファージのライソゾーム中における赤血球消化を想定している。そこで、ヒト単球系細胞THP-1を、PMA刺激によりマクロファージ様細胞に分化させた後、赤血球(オプソニン化あり・なし)や赤血球膜ゴーストを貪食させ、SPC産生量を測定した。結果としては、オプソニン化ありの赤血球を貧食させた場合のみSPCが産生され、そのSPC産生は貧食阻害剤であるサイトカラシンDにより完全に抑制された。以上より、ヘモグロビンを含む赤血球の貪食・消化の過程でSPCが産生されていることが、強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1)溶液中でのOHラジカルによるSPC産生の特異性の検討、および2)マクロファージの赤血球貧食によるSPC産生の証明、を主な研究実施計画としており、それぞれの検討課題について確実に実施し、結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞レベルでのOHラジカルによるSPC産生を証明するための補足データを得ることを第一目標とする。特に、マクロファージが赤血球を貧食する際に、実際にファゴソーム中にOHラジカルが発生していることを、活性酸素検出用蛍光試薬を用いて視覚的に捉えることができれば重要な補足データになると考えている。また、分子・細胞レベルでの研究結果を個体レベルでの実験に繋げていくのは容易ではないが、くも膜下出血モデル動物(ラット、イヌなど)を用いて、赤血球とマクロファージの動態について解析していきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)