2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J04530
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪口 翔太 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | EST-SSR / 葉緑体マーカー / 生態ニッチモデリング / 針葉樹 / オーストラリア |
Research Abstract |
本研究では、多様な環境を有するオーストラリア大陸全土に分布するヒノキ科針葉樹(Callitris columllaris)を対象とし、その環境適応プロセスを遺伝解析、生態ニッチモデリング等の手法を用いて解明することを目的としている。本年度は、1)ESTライブラリの構築と核SSRマーカーの開発、2)開発された核EST-SSR及び葉緑体マーカーを用いた遺伝構造の形成過程の解明、そして3)生態ニッチモデリングによる局所適応の可能性を検証した。1)では、実生組織から抽出したRNAに基づくESTライブラリを構築することに成功し、36,999個のcontig配列を得ることができた。このライブラリを利用することで、多型を示す52領域のEST-SSRマーカーを開発した。2)得られた核EST-SSRマーカーに加えて、葉緑体マーカーを用いて、大陸全体から収集した集団サンプルの遺伝子型を決定した。核EST-SSRにおける集団の遺伝的多様性には大きな地理的異変が存在し、大陸南部の集団に比べると北部集団はおよそ半分の数のアリルしか有していなかった。遺伝構造は核と葉緑体で類似しており、大陸南部に祖先的な系統が分布していた。また、過去の遺伝子流動のパターンから、本種は南部地域に起源した後に、東部の山脈を伝って北部地域に分布を拡大したことが示唆された。3)種内分類群ごとに構築した生態ニッチモデルを用いて、北部集団と南部集団のニッチ分化を検定したところ、集団間で有意な分化が検出され、南北集団間の直線的な分布境界が急激な環境勾配に一致した。以上の結果から、本種は低温乾燥気候の南部地域から熱帯モンスーン気候の北部地域に分布を拡大する際に、生態ニッチの進化と集団ボトルネックを経験していたことが明らかになった。
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