2010 Fiscal Year Annual Research Report
資源獲得競争と性的対立の行動生態学的解析:マメゾウムシ類を用いて
Project/Area Number |
10J04565
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
香月 雅子 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 精子競争 / ヨツモンマメゾウムシ / 資源競争 / ハラスメント |
Research Abstract |
精子競争への投資は、オス自身の精子の受精率をあげるため、メスへの適応度に大きな影響を与える。例えば、射精液に含まれるメスの再交尾を抑制する物質は、精子競争に有利になるように働く。しかし、これは場合によって、メスの生存に有害な効果をもたらし、メスの適応度が減少をもたらす。このように、精子競争を有利にするためのオスの投資は、オスにとっては適応的であるが、メスには不利益をもたらし、雌雄の利害の対立(性的対立)が起こる。この不利益に対してメスは対抗手段を進化させていると考えられる。そしてメスが対抗手段をとることにより、オスの適応度にも影響を与えるだろう。そこでこれからの研究では、精子競争に加え、性的対立に注目した研究を行う。まず、性的対立の存在下でメスのコストを軽減させている行動を特定する。また、成長期の資源競争タイプが異なる系統間では射精液量が異なるので、性的対立の程度が異なることが考えられる。このことを検証するために、オスの形質がどのくらい適応度上の不利益をメスにもたらすかを系統間で比較する。さらに、成長期の資源競争タイプと射精量の関係は、繁殖期のライバル数の違いを通して進化してきたと考えられる。そこで、繁殖期のライバル数の違いが繁殖形質の進化に与える影響を実験的に検証する。スクランブル個体の割合が多い系統では、メスに移送する射精液が多かった。これは激しい精子競争に対するオスの適応であると考えられる。そのような系統では、交尾前のメスをめぐる競争も激しく、オスは交尾への試みにも多くの投資を行っている可能性がある。マメゾウムシのオスは、メスに執拗に交尾を試みる。これはメスの適応度上のコストをもたらす性的ハラスメントとなる。資源競争タイプの異なる系統のオス間で、メスの適応度に与える性的ハラスメントの効果に違いがあるかどうかを検証する。メスへのオスのハラスメントの効果は、交尾できないように交尾器の切除を施したオスと同居させたメスと単独メスとの間で寿命と産卵数を比較するとこによって評価する。この実験は現在実施している段階である。引き続き、23年度も実験を行っていく。
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Research Products
(3 results)