2010 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素-ケイ素三重結合化合物ジシリンと有機小分子との反応性
Project/Area Number |
10J04661
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹内 勝彦 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機化学 / ケイ素 / ケイ素-ケイ素多重結合 / ジシリン / ジシレン / ニトリル / アミン / ボラン |
Research Abstract |
当研究室ではアルキンの高周期類縁体であるケイ素-ケイ素三重結合化合物ジシリンの合成・単離に成功し、素反応を行うのに十分なグラムオーダーでの合成法も確立した。ジシリンの反応性の解明はケイ素-ケイ素三重結合の本質的な性質を理解することにもつながるだけでなく、これまで合成困難であった新規含ケイ素不飽和化学種の合成へと応用できる。そこで、本研究ではジシリンと種々の有機小分子との反応性を検討するとともに、多重結合ケイ素化合物の関与する新たな有機分子の変換反応の設計につなげることを目的とした。本年度は、ジシリンと種々のイソシアニド・アミン・ボランとの反応を検討した。 ジシリンに対してtert-ブチルイソシアニドを作用させることで、低温下では二分子付加体であるビス(ンラケテンイミン)が生成することを低温NMR及びX線結晶構造解析から明らかにした。さらに、ビス(シラケテンイミン)の熱分解反応によって、これまでに合成例のなかった強力な電子求引基であるシアノ基が置換したケイ素-ケイ素二重結合化学種1,2-ジシアノジシレンの合成・構造解析に成功した。 また、ジシリンと種々の二級アミン、ヒドロボラン等との反応から、N-H、B-H結合がジシリンの三重結合に付加したアミノ置換及びボリル置換ジシレンの合成に成功した。さらに、各種NMR、X線結晶構造解析によりアミノ基・ボリル基上の置換基の嵩高さに応じて、アミノ基・ボリル基平面とケイ素-ケイ素二重結合との二面角が変化し、窒素上の孤立電子対またはホウ素上の空の2p軌道との共役の程度が変化することを明らかにした。これらの結果はケイ素-ケイ素三重結合の反応性の化学及びケイ素不飽和多重結合における置換基の影響について新しい知見を与えた。
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