2011 Fiscal Year Annual Research Report
超原子価ヨウ素化合物を触媒的に用いる不斉酸化的カップリング反応の開拓
Project/Area Number |
10J04684
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 猛 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超原子価ヨウ素 / 不斉合成 / スピロラクトン / 酸化反応 / 過酸化水素 / TBHP / カップリング反応 / フェノール |
Research Abstract |
毒性をもつ重金属酸化剤や高価な遷移金属触媒に代わる環境調和型の酸化剤として最近超原子価ヨウ素化合物が注目されている。しかし、超原子価ヨウ素を触媒的に用いる酸化反応の例は限られている。そのため、超原子価ヨウ素触媒を用いた分子内及び分子間の様々な酸化的カップリング反応の確立は重要である。また、光学活性な超原子価ヨウ素化合物の設計、及びそれを触媒に用いる不斉酸化的カップリング反応の開発も強く望まれている。23年度の研究計画として、高エナンチオ選択的酸化反応の開発、及び分子間酸化的カップリング反応への拡張を挙げていたが、以下に示す2つの優れた研究成果が得られた。1.申請者は新たにアミノアルコールをキラル源に用いる立体配座のより柔軟なキラル超原子価ヨウ素(III)触媒を設計した。その結果、mCPBA存在下、in situで調製されるキラル超原子価ヨウ素(III)を触媒に用いる1-及び2-ナフトール誘導体の脱芳香型酸化反応(北スピロラクトン化反応)において非常に高い化学収率(最高99%収率)及び不斉収率(最高99%ee)で対応するスピロラクトンを合成することができた。また、2002年にWood等はジアセトキシヨードベンゼンを化学量論量酸化剤として用い、適切なジエノフィル存在下、フェノール誘導体の脱芳香型酸化/Diels-Alderタンデム反応を報告している。申請者はこのタンデム反応についても検討し、最高98%eeで対応するスピロラクトンを得ることに初めて成功した。この研究により、これまで困難であったフェノール類を基質として用いる事ができるようになった。2.テトラブチルアンモニウムヨージドと過酸化水素(またはTBHP)を用いる触媒的オキシラクトン化反応及び、カルボニル化合物のα位とカルボン酸の分子間カップリング反応の開発に成功した。従来の反応条件よりも温和なため、ポリマー化しやすいアクリル酸も適用可能であり、アクリル樹脂合成の工業的な応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでのキラル超原子価ヨウ素触媒では困難であった高エナンチオ選択的な反応を世界に先駆け始めて成功し、その触媒前駆体は市販が開始されている。また、過酸化水素などの安全で安価な酸化剤を用いることのできる新規ヨウ素酸塩触媒システムを世界に先駆けて開発するなど、優れた成果をおさめることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現在までに開発しているキラル超原子価ヨウ素触媒を用いて、様々な不斉酸化反応に応用していく予定である。また、天然物や生理活性物質に含まれる骨格の新たな構築法となるような反応を開発し、実際に天然物や生理活性物質を合成する予定である。また、本研究で開発した反応のメカニズムを詳細に解き明かしていく。新規ヨウ素酸塩触媒システムにおいても、様々な新反応について検討し、より温和な条件下での酸化反応の開発を目指していく。触媒にはキラルカウンターカチオンを用いることで不斉反応の開発も同時に行い、必要に応じて新規触媒の設計及び合成も行っていく予定である。
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