2010 Fiscal Year Annual Research Report
企業倫理制度に関する規範的検討――雇用と就労における企業の配慮義務を中心として
Project/Area Number |
10J04711
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高田 一樹 慶應義塾大学, 商学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 企業倫理制度 / 企業の社会的責任 / 国連グローバルコンパクト / 責任ある経営教育 / 雇用と就労 / 配慮義務 |
Research Abstract |
本年度は、企業の経営実践に倫理的な配慮を求める制度(institution)の文脈を明らかにする作業に傾注した。具体的には国連グローバルコンパクト、ISO26000(国際標準化機構ガイドライン)、SA8000(労働と人権に関する国際規格)などに着目しながら、すべての企業を対象とする経営原則の特徴を浮き彫りにするため文献の整理と検討を行った。これらの経営原則には、株主や経営者の裁量権を最重視する企業統治の伝統的な考えかたから一線を画するとともに、一国の政治体制に備わる法・政治的な効力とも異なる規範性を帯びていることを明らかにした。 従来、企業のあるべき姿は、市場と政府の両輪により財配分の適正化を目指す政治経済体制を所与として議論されてきた。だが国際化と多国籍化の時代を経た今日のグローバリゼーションのもとで企業は、この体制の自明性を問い直す新たな経営環境と対峙しながら事業を営んでいる。企業倫理の制度は、一国内の市場と政府という近代的な体制とは異なるしくみを考案することで形成されている。そうであるのは、企業が経営の正しさを担保する必要に迫られ、その要求に応えるためである。 以上の検討を日本経営倫理学会での年次大会報告および、学会誌投稿を通じて発表した。また研究テーマに関する概要報告をアウトリーチ活動として3度行う機会にも恵まれた。今後、ウェブサイトのデータベースの更新・追補作業を続けることで、企業倫理制度における配慮(Care)の検討に歩みを進めたい。
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Research Products
(5 results)