2011 Fiscal Year Annual Research Report
培養神経系における情報処理機能の人為的制御と再生医療への応用
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10J04785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 祐三 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 培養神経回路 / 細胞パターニング / 微細加工 |
Research Abstract |
本年度の研究は,昨年度に引き続き,微小流路内におけるラット大脳皮質神経細胞のパターニング培養法の開発と改良を主に行った.今年度は特に,細胞をU字型のマイクロウェル部に効率的にトラッピングさせるための流体条件の最適化を行うことを目標として,流体シミュレーションソフトウェアを用いたマイクロウェル構造部における流体挙動のシミュレーションを行った.シミュレーションの結果より,作製したマイクロウェル構造は細胞トラップ前はディッシュ底面との間のギャップ部に高い圧力が発生することで神経細胞のトラップが促進され,細胞トラップ後はマイクロウェル側面部から背面部に向かう圧力が高くなることで神経突起の伸長をマイクロウェル構造の背面方向に選択的に誘導する原理となることが推察された.このシミュレーション結果を踏まえたうえで流速条件を最適化した結果,PDMSマイクロ流体チャンバへの神経細胞トラップ時は100μl/minの流速を使用し,細胞トラップ後の細贈培養時には0.5~1μl/minの流速が適当であるとの結果を得た.この培養液流速条件下で培養を行うことで,マイクロウェル構造部にトラップされた神経細胞群が80%超の高い割合で培養流れ方向に神経突起を伸長することを確認した.この培養法により神経細胞の軸索が隣接のマイクロウェル部へと信号を投射することになり,電気信号が一方向に伝達制御された培養神経回路網形成に大きな前進となることが示唆された.現在,免疫染色法を用いた軸索,樹状突起,シナプス形成部位の同定を行うことを考えており,PDMS流路内で信号伝達がどのような様式で行われているのかを観測することを目指している.これにより,提案手法の形態・機能を制御した培養神経回路網の形成という目標に対する優位性・限界点について更に検討することを考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において,流体シミュレーションによる培養液灌流速度の最適化に基づいた培養手法の改善を行うことで,PDMS流体チャンバ内において高い効率で神経細胞をマイクロウェル部にトラップさせ培養を行うことが可能となり,神経突起の伸長方向を制御した環境での培養が可能となった.細胞体を特定個所に局在化した上で,神経突起の伸展方向・極性を流体環境により制御する手法は本研究が初の試みであり,その新規性・有用性は高いと考えている.しかし,現状では構築したパターニング神経回路における電気活動伝播等の細胞活動の観測は行えておらず,回路構造を制御することによる神経機能制御が最終目標である本研究においては今後の神経活動計測と解析が重要な課題となると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において確立した培養手法により構築されたパターニング培養神経回路におけるシナプス伝達方向・極性の同定を行うために,まず免疫染色法による特定蛋白質の可視化を行う予定である.次に,PDMS培養チャンバーを配置するガラス基板上にマイクロ電極配線を予め行うことで,構築したパターニング培養神経回路における電気活動の計測と解析を行う予定である。更には,マイクロウェル部のアレイ構造と化学パターニング構造のデザインを変更することで,多種多様な構造と機能を有した培養神経回路の形成制御を行うことを目指している.
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