2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J04788
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 尚之 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 前初期遺伝子 / 神経可塑性 |
Research Abstract |
神経活動によって核内で引き起こされる前初期遺伝子群の誘導は、単一神経細胞レベルでの可塑的変化の基盤となる過程である。この誘導の様子を可視化することは、高次脳機能の根本的な原理を解明する上で不可欠である。 研究代表者はこれまでに前初期遺伝子の一つであるArcの刺激誘導性を担うエンハンサーであるSAREを発見した。(Kawashima,PNAS,2009)。 本研究の目的は、これまでの成果を発展させ、前初期遺伝子の誘導を生体内でリアルタイムに観察可能にし、更にはこの可視化した神経細胞を遺伝子工学的に操作する実験系を構築することである。研究代表者は研究計画の1年目に、SAREを用いた新規刺激誘導性プロモーターを作成し、更にはこのプロモーターを用いたウイルスベクターの精製・脳内注入法を確立した。これらの成果に基づき、研究計画の2年目には以下の成果を達成した。 成果1)2光子顕微鏡を用いた、生きたマウスの脳内での蛍光3次元イメージング法を習得した。 成果2)マウス頭蓋骨にカバーグラスを埋め込み、1ヶ月以上にわたり同一脳部位を繰り返し観察する、長期イメージング法を確立した。 成果3)上記イメージングで得られた画像を解析し、数千個の細胞を自動で同定する解析プログラムを作成した。 上記成果により、単一ウイルスベクターを用いて前初期遺伝子の誘導を生体内で観察する実験系を確立した。 これにより、脳内の情報処理・学習機構についての新しい知見がもたらされることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、培養神経細胞を用いて自ら確立した分子生物学の技術を生きた動物の脳内に応用することを目標としている。今年度は実験系を生体内に移行する大変重要な年であり、多数の困難が予想された中、直面した問題を一つ一つ解決し、生体内イメージングとその解析の実験系を確立したことは、特筆に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の次の課題は、自ら開発した新規プロモーターと、薬剤誘導性リコンビナーゼや光遺伝学等の遺伝子工学的手法を組み合わせ、これまでに不可能であった実験を可能にし、脳内の情報処理機構に新しい知見をもたらすことである。
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Research Products
(3 results)