2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J04841
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
横山 知大 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピントロニクス / 半導体量子ドット / スピン軌道相互作用 / スピン偏極電流 / g-因子 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、量子ドットにおける電子スピンの電気的制御について研究を行った。昨年度の研究では、磁場がない場合に3本以上のリードが接合された量子ドットにおいてスピン偏極が生成されることを示した。本年度では、磁場が印加された場合を考え、磁場の電子軌道への寄与(軌道磁性)と量子ドット中のスピン軌道相互作用の結合によるスピン偏極電流の生成について議論した。弱磁場を想定し、ゼーマン効果が無視できるとする。量子ドット中では離散的なエネルギー準位が形成される。磁場とスピン軌道相互作用はこの離散準位の軌道を混成させる。私は2端子系においても軌道磁性とスピン軌道相互作用によってスピン偏極が生成されることを示した。磁場を強くすると、エネルギー準位の間隔は磁場によって操作できる。私は磁場によって準位間隔がリードの結合による線幅より小さくなる状況を考え、大きなスピン偏極電流が得られることを示した。以上のスピン偏極電流の生成機構はゼーマン効果による機構とは異なったものである。2端子系の量子ドットは作製技術が確立されており、スピン軌道相互作用によるスピン偏極の生成を実験的に調べることが3端子系より比較的容易である。また、私は量子ドット中のエネルギー準位に着目した。軌道磁性とスピン軌道相互作用の結合により、準位のスピン分裂は軌道に体存する。量子ドットが異方的な形状の場合、磁場による軌道の混成は磁場の向きに依る。このとき軌道磁性とスピン軌道相互作用によってスピン分裂、つまり電子のg-因子が異方性を示すことを議論した。g-因子は電子スピン共鳴におけるスピン操作に関係する重要な物理量であり、スピン軌道相互作用を通じて電気的に制御することで電気的スピン操作につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半導体ナノ構造、特に量子ドットにおける電気的なスピン操作とスピン偏極の生成に資する研究として論文にまとめる状況に達しているため。当初の研究計画に完全に沿った研究内容ではないが、研究の進捗・達成度としては十全と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
スピン軌道相互作用が強い物質としてはInAsやInSbなどが挙げられる。これらの原子核は核スピンを有する。私はスピン軌道相互作用による電子スピンの偏極を介した電気的な核スピン操作・偏極について研究を進める。さらに、その核スピン偏極による磁場(オーガーハウザー場)のスピン偏極電流生成への寄与について調べる。また、電気的な電子スピンのコヒーレント操作の可能性探索として、超伝導リード接合系の研究を行う。そのために、まずスピン軌道相互作用のはたらく半導体ナノワイヤーが超伝導リードに接合された系について調べる。可能であれば、ゲート電極によってナノワイヤー中に量子ドット構造が作られた場合についても調べる。
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