2010 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー誘起応力波による難治性神経疾患の遺伝子治療に向けた技術開発
Project/Area Number |
10J04881
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 貴洋 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | レーザー誘起応力波 / フォトメカニカル波 / レーザー誘起衝撃波 / 遺伝子導入 / 脊髄損傷 / QスイッチNd:YAGレーザー / small interfering RNA / グリア瘢痕 |
Research Abstract |
光吸収体にパルスレーザーを照射したときに発生する圧力波、レーザー誘起応力波(Laser-induced stress wave ; LISW)による遺伝子導入技術を用いて、脊髄損傷モデルラットの遺伝子治療を試みた。脊髄損傷後の機能改善には神経軸索の可塑性が重要であるが、損傷後に過剰発現した中間径タンパク(GFAP、vimentin)から形成される瘢痕が神経軸索の再生を阻害する一因となっている。この過剰発現タンパクを抑制するための一つの方法として、特定のタンパク発現に関わる塩基配列をノックアウトしてタンパク発現を抑制する遺伝子、small interfering RNA (siRNA)を神経系細胞に取り込ませる方法が挙げられる。本研究では、まず脊髄損傷モデルラットを対象として、髄腔内に蛍光標識siRNA溶液を注入後、レーザーフルエンス0.3J/cm^2、スポット径3mmのLISWを10パルス適用し、その細胞内取り込み効果を検証した。その結果、LISW適用群では蛍光ラベルsiRNAが損傷脊髄内の前索部におけるグリア細胞内に取り込まれていることが確認された。続いて、過剰発現するとされる中間径タンパクの抑制効果を有するsiRNAのデリバリー実験を行い、そのタンパク発現量の変化を調査した。具体的には、GFAPおよびvimentinに対するsiRNAの混合溶液を髄腔内に注入後、蛍光標識siRNAの実験と同様のレーザーパラメータで、LISWをラット損傷脊髄に適用した。その結果、脊髄損傷のみの群、siRNA注入群と比してLISW適用群で中間径タンパクの発現量が減少していることがわかった。さらに、損傷中心部の神経脱落を組織染色(HE染色)により評価したところ、損傷から21日後に前索側の白質部分の回復と組織脱落部分の減少が確認された。これらの結果から、脊髄損傷モデルラットを対象に、LISWによる神経系細胞へのsiRNAデリバリーが達成され、その結果として損傷後の過剰発現タンパクの抑制およびグリア瘢痕の低減ができることを示した。今後、より詳細に機能改善が得られる条件を調査するとともにレーザー遺伝子導入デバイスの開発を進める。
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Research Products
(3 results)