2012 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー誘起応力波による難治性神経疾患の遺伝子治療に向けた技術開発
Project/Area Number |
10J04881
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 貴洋 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | レーザー誘起応力波 / フォトメカニカル波 / 遺伝子導入 / 脊髄損傷 / QスイッチNd:YAGレーザー / RNA干渉 / グリア瘢痕 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
本研究の目的は、光吸収体にレーザーパルスを照射したときに発生する応力波(Laser-induced stresswave;LISW)による物理的遺伝子導入技術を用いて、難治性神経疾患に対する遺伝子治療を実現することである。本年度は特に、ラット脊髄損傷モデルを対象とした遺伝子治療効果の実証と、経カテーテル的遺伝子導入デバイスによるラット脊髄への標的化遺伝子導入の実証に注力し、その成果を英文専門誌および国内外の学術会議で発表した。 脊髄損傷後の機能改善には神経軸索の可塑性が重要であるが、損傷後に過剰発現した中間径フィラメントタンパク質(GFAP、vimentin)から形成される瘢痕が神経軸索の再生を阻害する一因となっている。この過剰発現タンパクを抑制するための一つの方法として、特定のタンパク発現に関わる塩基配列をノックアウトしてタンパク発現を抑制する遺伝子、small interfering RNA(siRNA)を神経系細胞に取り込ませる方法が挙げられる。本研究では、脊髄損傷モデルラットを対象として、過剰発現する中間径フィラメントタンパク質を標的としたsiRNA溶液を髄腔内に注入後、LISWを適用し、タンパク発現の抑制効果と運動機能の改善効果を検証した。脊髄損傷から3週間後までの運動機能を評価した結果では、LISW適用群において、脊髄損傷のみの群、siRNA注入のみの群に対して統計学的に有意に高いスコアが得られ、それが神経軸索の顕著な伸長によるものであることを示した。 一方、本遺伝子導入法を経カテーテル的に応用するため、先端部の最大外径が2.7mmの遺伝子導入デバイスを作製し、脊髄への遺伝子導入に必要なLISWの圧力特性(レーザーフルエンス1.0 J/cm^2、スポット径1mm、パルス数30)と顕著な遺伝子発現が得られることをラットを対象とした実験で実証した。現在、脊椎内視鏡下手術をはじめとする脊椎と脊髄の疾患の低侵襲外科手術が一般的になり始めているため、柔軟に治療部位を制御できる本デバイスの開発は、臨床現場での脊髄損傷の遺伝子治療に極めて有用となる成果である.
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Research Products
(12 results)