2011 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルシステムバイオロジーによる細胞遊走制御機構解析
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10J04895
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
間木 重行 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 細胞遊走 / パスウェイ解析 |
Research Abstract |
本研究は、ケミカルシステムバイオロジーの手法による細胞遊走制御機構の普遍性と多様性の解明を昌的としている。具体的には、上皮増殖因子(EGF)の刺激を受けて遊走する数種類のがん細胞について、遊走刺激が引き起こす細胞内シグナル伝達を測定し、さらに標的分子既知の阻害剤がEGFシグナルに及ぼす影響を網羅的に評価する。そして、得られた結果を元にシステム生物学的解析を行い、遊走に携わるシグナル伝達系を細胞ごとに描画する。最終的には、得られた結果から全細胞に普遍的に存在する遊走シグナル伝達系と個々の細胞に特徴的な遊走シグナル伝達系のモデルを構築し、siRNAを用いた機能破壊実験によってモデルの確からしさを検証する。 平成23年度は、昨年度と同様の手法を用いてEGF刺激で遊走する3種類の細胞(ヒト扁平上皮がん由来A431細胞、ヒト食道がん由来EC109細胞、ヒト甲状腺がん由来TT細胞)において、EGF刺激に応答してリン酸化及び発現上昇する新たな9種類の分子に対し、16種類のシグナル伝達阻害剤が与える影響を評価し、その結果から描画できる各細胞のパスウェイ構造を比較した。その結果、MAPK経路やPI3K/Akt経路、JNK/cJun経路などは3細胞において普遍的であるが、他の多くのパスウェイが各細胞に特徴的に存在することが示唆された。特に、5-1ipoxygenase/LTC4/CysLT1経路が、TT細胞ではMAPK経路を制御するがPI3K/Akt経路には影響しない一方でEC109細胞では逆にPI3K/Akt経路のみを制御するという結果は、これまでの研究からは予期出来ない興味深い結果であった。 さらに本年度の結果から、TT細胞ではROCK下流の多くの分子が細胞遊走を正に制御しているが、EC109細胞やA431細胞ではそのような制御が見られず、代わりにGSK3下流の多くの分子が細胞遊走を制御していることが強く示唆された。即ち本年度で得られた結果は、EGFが引き起こす細胞遊走においてCysLT1、ROCK、GSK3などの分子が持つ役割の普遍性と多様性を解明する為の大きな手がかりとなり、本研究の目的を達成するにあたり重要な意義を持つものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、平成22年度に得られた新たな知見の確からしさを慎重に検証すると同時に、昨年に引き続きパスウェイ解析のためのデータ拡充を行い、当初の計画通りのデータ量を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、得られた各細胞のパスウェイ構造に関するトポロジー解析を行い、がん細胞の遊走制御シグナルの普遍性と多様性を解析し、さらにsiRNAを用いたノックダウン実験によって解析結果を検証する。また、パスウェイの持つ動的特性についても実験と計算機によるシミュレーションの両面から解析し、各細胞のパスウェイのモデルを構築することを目指す。しかし、シミュレーション技術の修得や論文化に向けた時間が不足した場合には、動的モデルの構築に関する研究内容を含めずに論文化を目指す。
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Research Products
(4 results)