2012 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルシステムバイオロジーによる細胞遊走制御機構解析
Project/Area Number |
10J04895
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
間木 重行 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 細胞遊走 / パスウェイ解析 / システム生物学 |
Research Abstract |
本研究は、ケミカルシステムバイオロジーの手法による細胞遊走制御機構の普遍性と多様性の解明を目的としている。具体的には、上皮増殖因子(EGF)の刺激を受けて遊走する数種類のがん細胞について、遊走刺激が引き起こす細胞内シグナル伝達を測定し、さらに標的分子既知の阻害剤がEGFシグナルに及ぼす影響を網羅的に評価する。そして、得られた結果を元にシステム生物学的解析を行い、遊走に携わるシグナル伝達系を細胞ごとに描画する。最終的には、得られた結果から全細胞に普遍的に存在する遊走シグナル伝達系と個々の細胞に特徴的な遊走シグナル伝達系のモデルを構築し、siRNAを用いた機能破壊実験によってモデルの確からしさを検証する。 平成24年度は、昨年度と同様の手法を用いてEGF刺激で遊走する3種類の細胞(ヒト扁平上皮がん由来A431細胞、ヒト食道がん由来EC109細胞、ヒト甲状腺がん由来TT細胞)において、EGF刺激に応答してリン酸化及び発現上昇する15種類の分子のタイムコースデータを詳細に再取得し、各分子の活性化時間の違いについて考察した。それらの分子群の中から顕著に活性化もしくは発現上昇をする9種類の分子に対して、細胞遊走を阻害する15種類のシグナル伝達阻害剤が与える影響を評価し、その結果から描画できる各細胞のパスウェイ構造を比較した。その結果、MAPK経路やPI3K経路、JNK経路などは3細胞において共通のトポロジーであったが、全パスウェイの約1/3程度の制御が各細胞に特徴的に存在することが示唆された。 特に、CysLT1やGSK-3、ROCKなどの分子群が、TT細胞ではMAPK経路を制御するがPI3K/Akt経路には影響しない一方でEC109細胞では逆にPI3K/Akt経路のみを制御するという結果は、これまでの研究からは予期出来ない興味深い結果であった。即ち本年度までに得られた結果は、EGFが引き起こす細胞遊走においてCysLT1、ROCK、GSK3などの分子が持つ役割の普遍性と多様性を解明する為の大きな手がかりとなり、本研究の目的を達成するにあたり重要な意義を持つものであった。 今年度、本研究の達成成果の一部を2報の論文にて発表し、現在さらに2報の論文を投稿準備中である.
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Research Products
(6 results)