2011 Fiscal Year Annual Research Report
アニオン交換輸送体AE1の膜トラフィック制御メカニズム
Project/Area Number |
10J05021
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大津 航 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 膜タンパク質 / AE1 / 小胞体 / COPII小胞 / 輸送モチーフ |
Research Abstract |
分泌タンパク質や膜タンパク質は小胞体(ER)で産生され、内在アミノ酸配列による輸送モチーフによって選別され、細胞内の適切な場に輸送されその機能を発揮する。申請者らは牛AE1のN末端近傍に存在するΦXΦXΦ(Φは疎水性アミノ酸、Xは任意のアミノ酸を表す)配列が、小胞体からゴルジ装置(Golgi)への輸送を効率化していることを明らかにしてきた。本研究の目的は「新規モチーフ配列によるER-Golgi間輸送の分子基盤の解明」であり、ΦXΦXΦ配列がタンパク質輸送にもたらす影響について検討を行った。ER-Golgi間輸送はCOPII小胞により行われており、ゴルジ装置へ運ばれるタンパク質の認識はCOPII小胞構成因子であるSec24が担っていることが明らかになっている。従って、新規モチーフ配列についてもCOPII小胞を構成するタンパク質と相互作用することで輸送小胞へ組み込まれ、輸送が効率化していることが予想される。本年度はΦXΦXΦ配列と相互作用するタンパク質を同定するため、AE1のN末端領域を含むペプチドを精製し、それをBaitとして用いて、HEK293T細胞の細胞可溶化物と反応させ、SDS-PAGEおよびCBB染色にて結合タンパク質を分離、可視化した。その結果、牛AE1のN末端領域を含むペプチド(ΦXΦXΦ配列を含む)に特異的に結合する、見かけの分子量が約120kDaと85kDaのタンパク質を分離することができた。これらの分子量はそれぞれSec24とSec23に相当する大きさであり、特異抗体を用いたイムノブロットにて、実際にそれらがこれらのCOPII構成タンパク質であることが明らかとなった。以上の結果から、ΦXΦXΦ配列はモチーフ配列としてSec24に認識されることによって、ER-Golgi間の輸送を効率化していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は相互作用タンパク質の同定に力を注ぎ、期待通りにタンパク質の分離・同定をすることができた。今後その機能について解析し、より詳細な分子機構を明らかにしていくための大きな一歩を踏み出すことができたと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らはこれまでに牛アニオン交換輸送体AE1のN末端新規モチーフ配列ΦXΦXΦ(Φは疎水性アミノ酸、Xは任意のアミノ酸)が、Sec24と相互作用することによってER Golgi間輸送の効率化に働くことを明らかにしてきた。今後は、siRNAを用いたノックダウン実験によって、実際にSec24が細胞内での輸送効率化に寄与しているのかについて明らかにする予定である。また、このΦXΦXΦ配列が極性細胞において、どのような働きを担っているのかについて、MDCKI細胞を用いた実験により明らかにしていきたいと考えている。
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