2010 Fiscal Year Annual Research Report
土壌圏のメタン生成・酸化機構解明のための安定同位体的手法と分子生物学的手法の活用
Project/Area Number |
10J05033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 雅之 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 温室効果ガス / メタン / 森林 / 湿地 / 水田 / 安定同位体 / 微生物群集解析 |
Research Abstract |
全国8県9地点の水田圃場においてメタンフラックス観測を行い、日本の水稲栽培で慣行的に行われている中干や中干後の間断灌漑を延長・強化するなどの水管理の変更を行うことで、耕作期間中のメタン放出が慣行的栽培法と比較していかに変化するかについて検討した。観測の結果、中干延長や間断灌漑などの水管理の変更により、多くの地点で慣行水管理に比べて栽培期間中のメタン放出を低減できた。特に、前年の有機物残渣を鋤き込んだ地点や、東北地方などの慣行水管理の中干期間が比較的長い地点で顕著であった。水管理の変更による収量低下が15%以下、メタン放出削減が10%以上の条件を満たす事例を抽出した場合、水管理の変更により平均でメタン放出が69.5%(対慣行)に抑えられた。その際の収量低下は平均で3.8%であった。これらの知見は、日本のみならず水稲栽培を行う多くのアジア諸国における農業生態系からの温室効果ガス発生削減に貢献するものと考えられる。この成果は海外誌に投稿、受理された。 さらに、マレーシア熱帯雨林で行ったメタン・亜酸化窒素・二酸化炭素の林床土壌におけるフラックスの時空間変動の観測結果を降水量や土壌水分の変動、土壌の物理性などに着目して解析を行い、国際誌に投稿中である。また、溶存有機炭素の安定同位体比測定の簡便・迅速化を進めており、標準試料の分析をもとに分析精度の検証を行っている。次年度には、自然環境中の試料分析が可能になると考えられ、森林内部の溶存有機炭素のみならず、湖沼などの各種生態系での炭素動態の解明につながる手法の開発となることが期待できる。
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