2010 Fiscal Year Annual Research Report
ワルファリン抵抗性ドブネズミ及びクマネズミにおける新規抵抗性機構の解明
Project/Area Number |
10J05170
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 和之 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ワルファリン / VKOR / 野生ラット / 血液凝固時間 / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
野生ラットにおいて、VKORC1遺伝子のアミノ酸シークエンス解析を行ったところ、ワルファリンに抵抗性を示した、首都圏由来、大阪由来、新潟由来の個体群はそれぞれ異なる変異パターンを有していることがわかった。またこの他にワルファリンに対して感受性を示す個体の中でもVKORC1遺伝子に変異をもつ個体が確認され、抵抗性を示す変異パターンを含めると、VKORC1のアミノ酸配列のパターンは全部で10種類にも上ることがわかった。しかし、ヨーロッパにおける抵抗性個体のもつ139番アミノ酸に変異を持つ個体は存在しなかった。 ワルファリンはVKORの酵素活性を阻害し、血液凝固系を破綻させることによって失血死をもたらすという作用機序を有している。そこでVKORC1遺伝子に遺伝多型が認められる個体について、その機能的変化について検討するために、血液凝固因子の変化に着目して検討した。はじめにワルファリン非存在下、すなわち生理的条件下における血液凝固時間はワルファリン感受性個体と抵抗性固体の間に有意な差は認められなかった。次に、ワルファリン投与後24時間後及び48時間後の血液凝固時間を測定したところ、ワルファリン感受性個体はワルファリン投与後24時間後、及び48時間後において血液凝固時間の延長がみられたのに対し、ワルファリン抵抗性個体はワルファリン投与後24時間後及び48時間後の血液凝固時間は延長はみられなかった。またVKORの変異パターンの異なるワルファリン抵抗性個体について、ワルファリン投与後の血液凝固時間を感受性個体と比較したところ、APTTとHPTにおいて抵抗性個体の血液凝固時間は有意に短いことがわかった。以上より、ワルファリン抵抗性個体はワルファリン中毒下でも血液凝固因子が正常に機能していることがわかり、変異を有するVKOR酵素はその機能的変化が見られたことがわかった。
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