2010 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-窒素結合のルテニウムによる切断機構解明、およびそれを用いた新規触媒反応開発
Project/Area Number |
10J05293
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
是枝 徹郎 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ルテニウムホスフィン錯体 / 不活性結合切断 / 炭素-窒素結合切断 / ルテニウムアミド錯 |
Research Abstract |
ルテニウムホスフィン錯体RuH_2(CO)PPh_3)_3と2'-アミノピバロフェノンを反応させると、アニリンの芳香族炭素-窒素結合が切断され、アリールアミド錯体が生成する。今回、私はこの反応におけるアミノピバロフェノン上の置換基の影響について調査を行った。置換基の効果は、異なる置換基を有する2種類のピバロフェノンを用いた競争反応を用いて評価することとした。種々検討を行った結果、電子供与基をもつピバロフェノンの炭素-窒素結合の方が電子求引基をもつものよりも速く切断されることが明らかとなった。一般的に遷移金属錯体による炭素-ヘテロ原子結合の切断は、電子求引基をもつ基質の方が速く進行するとされており、今回得られた結果はそれと逆の傾向を示している点で興味深い。また、錯体RuH_2(CO)(PPh_3)_3を触媒として用いたアミノピバロフェノンの触媒的フェニル化反応においても同様の傾向が観測された。化学量論反応だけでなく触媒反応においても同様の傾向が観測されたことから、これらの反応は同様の中間体を経由して進行していることが示唆された。現在のところ、よりルテニウムヘ配位し易い電子豊富な基質の方が速く反応することから、ルテニウムによる基質の活性化がどのような置換基を有する場合でも十分に速く進行する場合、基質のルテニウムへの配位が反応速度を支配する重要なファクターとなるのではないかと考えている。現在、遷移金属錯体を用いた不活性結合切断を経る官能基化反応では、配向基による反応点の制御が頻繁に行われているが、今回得られた結果はこの配向基の遷移金属錯体への配位能が反応速度に影響を与えることを示唆するものであり、今後この分野の研究において重要な知見となると考えている。
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