2011 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-窒素結合のルテニウムによる切断機構解明、およびそれを用いた新規触媒反応開発
Project/Area Number |
10J05293
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
是枝 徹郎 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ルテニウム錯体 / 炭素-窒素結合切断 / 炭素-水素結合切断 / 炭素-炭素結合生成 |
Research Abstract |
ルテニウム錯体RuH_2(CO)(PPh_3)_3(1)存在下、N,N-ジメチルアニリン誘導体の炭素-窒素結合切断を経る新規官能基変換反応開発について検討を行った。前年度得られた実験結果より、ルテニウム錯体1を用いてアニリンの芳香族炭素-窒素結合切断ではルイス酸が補助剤として機能している可能性が示唆されていた。そこで、反応系中に種々のルイス酸を添加しN,N-ジメチルアニリン誘導体とオレフィン化合物と反応させた。検討の結果、ルイス酸として酸化銅(I)を添加したとき最も効率よく炭素-窒素結合が切断され、対応するアルキル化体が得られた。アニリン誘導体の芳香環部にメトキシ基を導入した基質を用いると、アルキル基はアミノ基が存在していた箇所とは異なる位置に導入されていることが分かった。このことから、この反応は炭素-窒素結合が切断されて炭素-水素結合が生成した後、炭素-水素結合切断を経るオレフィンとのアルキル化反応が進行しているものと考えている。また、炭素-水素結合生成時の水素はジメチルアミノ基からβ-水素脱離を経て供給されていると推測している。芳香族炭素-窒素結合切断後にオレフィンとのカップリングによりアルキル基が導入される官能基変換反応は今までに報告例がなく、有機合成化学上興味深い知見であるといえる。また、オレフィンを添加せずにこの反応を行うと、脱アミノ基体が効率良く得られることも見出した。この反応は新たなアミノ基の保護・脱保護反応として用いることが出来、新規合成ルート構築に役立つのではないかと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
未だ反応条件、反応機構等検討すべき項目は数多くあるが、当初の目的である新規触媒反応を二種類見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今回発見した触媒反応の更なる収率向上を目指した条件検討、基質適用範囲の探索を行う予定である。また、反応機構についても重水素ラベル実験等を用いて明らかにしたいと考えている。加えて、添加剤による炭素-窒素結合切断の補助が確認されたため、ジボロンなど異なる反応剤を用いた炭素-炭素、炭素-水素以外の結合生成反応開発にも着手する計画である。
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Research Products
(1 results)