2011 Fiscal Year Annual Research Report
「遷移金属錯体/有機分子」二成分触媒系の開発による高度分子変換
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10J05324
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
戸田 泰徳 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遷移金属錯体 / 有機触媒 / ロジウム / キラルリン酸 / ジアゾ化合物 / カルベン / イリド / 不斉還元 |
Research Abstract |
申請者は「遷移金属錯体/キラルブレンステッド酸触媒」二成分触媒系の構築を目的として、高効率的かつ高選択的、新規分子変換反応の開発を行っている。本年度は、遷移金属触媒による官能基変換反応とキラルブレンステッド酸触媒反応との融合:金属カルベノイドを鍵中間体とする二成分触媒系の開発の一環として、「ロジウム錯体/キラルブレンステッド酸」リレー触媒系によるカルボニルイリドの発生とその不斉還元反応を検討した。 カルボニルイリドは一般的に単離できない高い反応性を有する中間体であり、種々の親双極子との1,3-付加環化反応は含酸素多環式化合物を与えることから、1,3-双極子として汎用されてきた。その中で、ロジウム錯体によるジアゾ化合物の分解反応を起点としたロジウムカルベン/カルボニルイリドの形成反応は、最も広く研究されている方法の一つとなっている。しかしながら、カルボニルイリドは1,3-付加環化反応にのみ用いられ、魅力的な中間体であるものの、他の有機変換反応に活用された例は皆無であった。そこで申請者らは、カルボニルイリドの合成的な適用範囲を拡充するため、ロジウム錯体によるイリド形成反応を有機分子触媒反応と結びつけたワンポット・リレー型反応を試みることにした。 検討の結果、今回我々はロジウム二核錯体とキラルブレンステッドとしてキラルリン酸を用い、カルボニルイリドの発生とその不斉還元反応において、ワンポット・リレー型反応の開発に成功した。本反応は、イソベンゾピリリウムを鍵中間体とした、4つの連続した変換反応から構成されていることがわかった。また、キラルロジウム錯体を用いた反応機構に関する実験結果から、エナンチオ選択性の発現にはキラルリン酸触媒の使用が必須であることが明らかとなった。本反応系は、還元反応のみならず、他の求核付加反応にも適用できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の記載内容に従い反応探索を行った。おおむね順調に進展した理由としては、23年度に予定していた研究実施計画において、金属カルベノイドを鍵中間体とする二成分触媒系の開発に成功したことが大きい。平成22年度に得られた炭素-炭素二重結合の異性化反応の成果と併せ、現在のところ研究の目的はおおむね達成されていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「遷移金属錯体/有機分子」二成分触媒系の開発において、申請者は特にワンポット・リレー型反応に着目し、新規変換反応の探索を中心に研究課題を進めてきた。これまでにいくつかリレー型反応系を確立することに成功した。今後もこれまでの指針に従って研究の目的を達成するために努力する。その一方で、リレー型反応以外の反応開発は遅れている部分があり、二成分触媒系の無限の可能性を示すべく、より広い視点で反応探索を行っていく予定である。また、金属錯体の特徴を活かした反応の開発を目指し、有機触媒反応とのさらなる融合を目指す。
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Research Products
(6 results)