2011 Fiscal Year Annual Research Report
二次リンパ組織、特に鼻咽頭関連リンパ組織形成における転写因子Runx2の機能解析
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10J05420
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大倉 英明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | P2Runx2 / 骨形成不全 / NEOr / 致死性 / 致死性回避 / 中断 |
Research Abstract |
前年度までに作製したマウスが新生仔期に致死性を見せたことに関して、これを回避するために原因を追究し解決策を講じた。致死のマウスの表現型を詳しく解析した。まず胎生18.5日目で胎仔を解剖し、頭蓋骨細胞を精製、遺伝子発現を解析した。解析の結果、P2Runx2発現は有意に減少しており、加えてアルカリフォスファターゼやRANKLといった骨芽細胞の成熟マーカー遺伝子の減少が見られた。そこで全身骨格を軟骨、硬骨に対する染色法で染色したところ、骨の石灰化に遅れが生じていることがわかった。さらに詳細な検討を行うため、東京医科歯科大学の高柳広教授との共同研究を構築してこのマウスをμCT解析に供したところ、組織当たりの骨量や骨梁数が有意に減少しており、骨形成異常が死因であることが示唆された。この解析と同時に、全身的にネオマイシン耐性遺伝子であるNEOrカセットを除去したマウスを作製したが、このマウスでは致死性が見られなくなった。したがって、NEOrの存在がP2Runx2の発現減少をもたらし、これにともなう骨形成異常が死因であると考えられた。そこで骨関連細胞でのみ、NEOrを除去する戦略を立てた。これにより骨関連細胞でのみP2Runx2発現が回復し、さらに骨形成が正常化することで致死性を免れる一方、全身的にはP2Runx2の発現量を低い状態に維持できると考えたからである。そこで軟骨特異的にNEOrを除去したところ、野生型と同等に生育可能なホモ遺伝子型マウスを得ることができ、致死性を回避することに成功した。そこでこのマウスにおいてNALTの形成を解析したところ、野生型同等のNALTが観察され、仮説を否定する結果となった。さらに、いくつかの前任者らの実験データの再現を取ろうと試みたところ、再現を得ることができなかったため、この研究テーマを一度中断することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マウスの作製は成功し、最大の課題であった致死性の回避にも成功したが、得られた結果は仮説を否定するものであった。さらに前任者らの残した基礎データの再現を得ることができず、これ以上の継続により成果を出すのは困難と判断し、当初のテーマを中断したため。
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Strategy for Future Research Activity |
非常に不本意ながらも、NALT形成研究は中断せざるを得なくなったため、今後は作製したマウスの骨形成不全に関する表現型を詳細に解析する。なぜならば、Runx2のアイソフォームのうちP2Runx2に関して直接的に骨形成への関わりを解析した報告はいまだ無く、作製したマウスがこれを知る有用なツールになると考えるからである。今後はP2Runx2の発現がいかに時空間的に制御され、骨形成を制御しているのかを、P2Runx2の発現制御を解析することで理解していく予定である。
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