2011 Fiscal Year Annual Research Report
閾値型反応ネットワークにおけるロバストなシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
10J05435
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 雅世 大阪大学, サイバーメディアセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヒートショック応答 / 適応応答 / ヒートショックタンパク質 |
Research Abstract |
本年度は、ヒートショックタンパク質の発現メカニズムについて理論面から考察をおこなった.タンパク質がその機能を示すためには、正しく折れたたまれることが必要である.しかし、その折れたたみ構造は不安定であり、外界からの刺激によって容易に壊れてしまう.例えば、急激な温度上昇刺激(ヒートショック)をうけると、折れたたみ構造が壊れたタンパク質の量が増加する.これらの壊れたタンパク質を再び正しく折りたたむために、折りたたみを補助するタンパク質(シャペロン)が存在している.温度上昇直後は、壊れたタンパク質の増加をうけてシャペロンの量も増加する.ところが、一定時間経過し高温環境下で新しい平衡状態に達すると、必要とされるシャペロンの量は再び減少することが知られている.すなわち、シャペロン生成率は適応応答型の時間変化を示す. このヒートショック反応のメカニズムには、2つのタイプが存在する.両反応系は、シャペロンの発現量をネガティブフィードバックループで制御している点は共通しているが、その向き、つまり、転写因子がシャペロンの発現を活性化するか抑制化するかという点において異なっている.今回は、両反応システムをそれぞれモデル化し、両者を比較することを目的として研究をおこなった. まず、各反応系において、実験結果を再現する様な応答(シャペロン生成率の時間変化)を得ることに成功した.さらに、両反応の違いとして、両反応系におけるフィードバックループの向きの違いに起因して、ある対応する結合反応の乖離定数に互いに相容れない条件がつくことを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は計画に則り、実験結果に基づいた反応メカニズムをモデル化したうえで、パラメタ値による振舞いや性質の変化を調べることを考えていたが、両反応系の比較自体が十分意味のある結果であると判断し重点的に取り組んだ結果、パラメタ値変化の影響を調べるまでに至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、取り組んでいく.若干の遅れはあるが、すでにモデルの基礎部分はできていることから、計画の遂行は可能だと考えている.
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