2011 Fiscal Year Annual Research Report
NMRを用いた異常プリオンの構造解析とその多様性の評価
Project/Area Number |
10J05602
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山口 圭一 岐阜大学, 大学院・連合創薬医療情報研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | プリオン / アミロイド線維 / 核磁気共鳴 / 超音波 |
Research Abstract |
核磁気共鳴(NMR)を用いた異常プリオンPrp^<Sc>の構造解析を行なうため、まず超音波照射下におけるプリオン蛋白質(PrP)のアミロイド線維形成について調べた。近年、試験管内で超音波を用いた異常プリオン(Prp^<Sc>)の増幅実験がしばしば行われているが、Prp^<Sc>の増幅に必要な超音波パワーについては分かっていない。本研究ではカロリメトリー法とH酸化法を用いて、Prp^<Sc>の一つであるPrPアミロイド線維形成に必要な超音波パワーについて調べた。その結果、超音波パワー2.0W程度が線維形成には適当であることが分かった。超音波パワーを定量化することにより、今後Prp^<Sc>の検出を効率よく、また一定基準の元で行えるようになると考えられる。 次に、作製したPrPアミロイド線維の構造解析を以下の方法で行った。(1)PrPアミロイド線維の重水素交換、(2)DMSOによる線維の可溶化、(3)NMRによる重水素交換の追跡。この手法を用いることで、アミロイド線維内で水素結合を形成しているアミノ酸残基を特定することができる。しかし、この手法ではDMSO溶液中でPrPのHSQCスペクトルを帰属する必要がある。しかし、現在この帰属に難航しており、今後も引き続きHSQCスペクトルの帰属を行う必要がある。 また、NMRを用いてアミロイド形成に関わる中間体の検出を行った。まず、標準試料としてリゾチームを用いて、超音波照射下、pH1.6、42℃でアミロイド線維を作製し、NMRスペクトルを連続測定した。その結果、リゾチームは天然状態と凝集体の2状態だけではなく、さらに変性状態が並行して蓄積されることが分かった。MALDI-TOF Massによる解析により、変性したピークは特異的に加水分解されたリゾチームであり、線維形成と酸加水分解が競合して起こることが分かった。今後さらに研究を発展させ、PrPのアミロイド線維形成反応を追跡する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
異常プリオンPrP^<Sc>やアミロイド線維の重水素交換反応を追跡するためには、異常凝集体を溶かし、同時に重水素交換反応を遅くする溶媒が必要である。さらに、その溶媒中でPrPのHSQCスペクトルの完全帰属が必要である。しかし、現在のところHSQCのピーク数が少なくまだ完了していない。今後も引き続き研究を行い、帰属を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きNMRや各種分光器を用いて異常プリオンPrP^<Sc>やアミロイド線維の構造解明に向けて研究を行う。特に、重水素交換反応を追跡するのに適した溶媒の探索とPrPのHSQCスペクトルの完全帰属を目指して研究を続ける。
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