2010 Fiscal Year Annual Research Report
微生物群集における水素循環~微生物マットにおける水素発生と消費~
Project/Area Number |
10J05625
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大滝 宏代 首都大学東京, 理工学研究科・生命科学, 特別研究員DC2
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Keywords | 微生物マット / 物質循環 / 水素発生 / 水素消費 / 光合成細菌 / 硫酸還元 / 硫黄還元 / エネルギーの流れ |
Research Abstract |
多様なエネルギー獲得経路をもつ微生物は、有機物が限られた環境下でも無機物(硫化水素・水素など)を電子供与体としてエネルギーを獲得することもできる。そのため、生態系全体のエネルギーの流れを理解するには、炭素・硫黄・水素などの複数の物質について考慮しなければならない。そこで本研究では、物質とエネルギーの流れを統一的に捉えたモデルを確立することを期待して、そのアプローチとして温泉微生物マット中の水素の流れを明らかにし、炭素・硫黄循環とどのように作用して群衆内のエネルギーの流れに関与しているか研究を進めてきた。マット中の細菌の16SrRNA遺伝子を対象にクローライブラリーを構築した結果、20%が発酵細菌(Fervidobacterium ripariumiに近縁)が占め、主な構成種3種のうちの1つであった。同細菌はマットから単離した株と同じ塩基配列を持ち、水素発生能を有することから、群集内の水素生産者であると考えられた。硫酸/硫黄還元代謝による水素消費がこれまでに観察されたが、今回の解析結果からはそれに該当する細菌は検出されなかったため、同細菌の割合が少ないと考えられた。そこで、その候補として報告されている細菌の16SrRNA遺伝子に特異的なプライマーをデザインし、同細菌が群集中に含まれるかどうかについて検出可能にした。微生物マットを光独立栄養条件下で培養を行い、継代継続することが可能であったことから、クローンライブラリーで30%を占めた主要構成種の1つである糸状性光合成細菌Chloroflexus aggregansの炭酸固定によって生成した有機物が発酵細菌へ供給されているという仮説が支持された。各々の細菌が微生物群集に含まれる割合が明らかになり、それぞれが担っている水素・炭素・硫黄化合物の流れが群衆内のエネルギーの流れにどの程度寄与しているかについて理解が深まった。
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Research Products
(1 results)