2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境探索に伴う視覚認識の比較認知科学的検討 : 生態に関連した外界認識の多様性
Project/Area Number |
10J05728
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
別役 透 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 比較認知科学 / 空間認知 / ナビゲーション / 幾何学情報 / 道具使用 / シリアンハムスター / デグー |
Research Abstract |
本研究は、齧歯類を対象に、採餌のための空間探索等の場面に伴う環境認識ついて行動学的手法を用いて検討し、動物の外界認識に生態学的要因が与える影響を解明することを目的とする。本年度は、シリアンハムスターの空間探索における手がかりの利用の研究を中心に実験を進めた。空間手がかりの利用に関する先行研究の大半は2次元平面を想定したものであり、残る垂直次元の情報の利用については知見が少ない。今回は中央に段差のある長方形装置を用いて、段差という垂直次元情報と装置の幾何学的形状の情報の利用を検討した。長方形装置の四隅のうち強化子のある1か所を最初に訪れるようシリアンハムスターを訓練した。この課題を達成するためには、垂直次元情報と幾何学情報の両方を手がかりとする必要があるが、全体的に学習は困難であった。被験体の行動を分析した結果、個別に割り振った正解位置の高低に関わらず、どの被験体も段差を降りる方向に進む傾向が強く、これが全体的な成績低迷の原因であったと推測される。後続実験として、長方形装置から段差を取り除き、幾何学形状のみを手がかりとすると比較的容易に学習したことから、段差が幾何学情報の学習に妨害的に影響していることが示唆された。空間探索実験の他に、デグーの道具使用行動における因果関係の認識に関する行動実験を、昨年度から被験体を追加して引き続き検討した。フック型の道具を用いて手の届かない位置にある食物を引き寄せる行動を学習させた後、食物や道具の位置関係を段階的に操作し、被験体が容易に食物を得られる道具の方を選択するか検討した。結果、大半の個体がエサの有無に基づく道具選択を学習せず、これを学習した個体の行動も、エサと道具の位置関係に基づく選択には般化しなかった。食物報酬に対する動機づけの問題、および食物や道具の配置が弁別刺激として機能しにくかった可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間探索に伴う手がかり利用の研究について、類例の少ない垂直次元情報とその他の手がかりとの関係性の一端を示した。追加の条件操作や種間比較などの応用が比較的容易な実験課題でもあり、実験手続きも確立しつつある。道具使用実験についても見通しが立ち、全体的にみておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き垂直次元情報の利用を中心に、段差の代わりに傾斜をつけた装置を用いた実験を計画している。また、こうした垂直次元情報が空間探索に与える影響について、幾何学情報だけでなく標識などの特徴情報とも比較検討していく予定である。最終的には種間比較を通して空間認知の多様性をより明確にしていきたいと考えている。
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Research Products
(6 results)