2010 Fiscal Year Annual Research Report
RhoファミリーG蛋白質活性化の可視化と制御による管腔構造の形成・癌化機構の解析
Project/Area Number |
10J05775
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
八木 俊輔 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 管腔構造 / Rhoファミリー低分子量G蛋白質 / 上皮極性 / 癌 / 過形成 / 活性パターン / FRETイメージング / MDCK細胞 |
Research Abstract |
[背景]上皮細胞の癌化に伴い生じる管腔構造の形態異常がどのようにして起こるのか不明な点が多いが、そのメカニズムの理解は腫瘍の悪性化を抑制する手段を見いだす一助となる。本研究では管腔の上皮極性の破綻にRhoファミリーG蛋白質の活性パターンが関与するという仮説を立て、これをFRETイメージングと活性制御法を組み合わせて検討している。去年度以前の研究で、管腔を構成するMDCK細胞の細胞膜におけるRac1の活性は管腔が成熟するにしたがって内腔側で低下する事を明らかにした。 [結果]本年度はRac1を強制的に活性化させることでその活性分布を壊し、形態・極性の変化を検討した。成熟した管腔において細胞膜のRac1を強制的に活性化させると、上皮極性マーカーであるGPI-mCherryとGFP-Syntaxin4の局在が乱れ、上皮極性が失われる事が分かった。このような管腔では強制活性化後24時間で細胞分裂方向がランダムになり、その結果細胞分裂時に内腔へ細胞が飛び出し、過形成様の多層の細胞層を生じた。この時多層になった細胞群において密着結合マーカーであるGFP-OccludinとZO-1の内腔側への局在が消失していた。以上の結果から成熟した正常な管腔の内腔側で低く保たれているRac1の活性は、上皮極性の維持に関与する密着結合の形成を維持し、上皮極性の破綻・細胞分裂方向の異常により引き起こされる過形成様の形態異常を阻止するために必要である事が示唆された。 [重要性]本研究はこれまで行われてきた管腔に関する研究とは異なり、Rac1活性のパターンに注目しその機能を明らかにした。蛋白質の量や活性の度合いだけでなく、活性パターンの変化が病態に関与する可能性を見いだした点で本研究は重要であると言える。
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