2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト細胞の再生医療における移植源としての有用性を評価する新規動物システムの確立
Project/Area Number |
10J05822
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松井 健 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経分化誘導 / 人口多能性幹細胞 |
Research Abstract |
NOGマウスのiPS細胞を用いて樹立した免疫不全疾患モデルマウスに対して、ヒトの体細胞から誘導した神経細胞を移植し、治療効果を検証することが申請者の最終的な目標である。 申請者は、平成22年度の一年間に移植治療に用いる神経幹細胞を樹立する培養系を確立した。申請者は成体マウス線維芽細胞に特定の遺伝子を導入し、胚葉体の状態を介さず神経幹細胞培地で培養を継続することで、iPS細胞の状態を介さずに神経幹細胞を樹立することに成功した。これらの神経幹細胞はiPS細胞から樹立した神経幹細胞と比較して未分化細胞の混入が少なく、遺伝子解析の結果、成熟神経幹細胞の特徴を有していることが明らかになった。申請者は、これらの細胞の安全性評価のためこれらをマウスの脳内に移植した。その結果、一部のマウスで腫瘍形成が見られたが、その確率は以前の方法で胚葉体から樹立された神経幹細胞を移植した場合と比較して有意に低かった。これらの細胞の移植により神経疾患の症状改善効果が期待される。また、移植後の腫瘍形成の危険性が低いものと期待される。この方法は成体の線維芽細胞を用いて安全性の高い神経幹細胞を樹立することを可能とするものであり、成体の細胞が幼弱な線維芽細胞よりも樹立が容易であることを考慮すると、大きな意義があるものと考えられる。この方法で樹立された神経幹細胞は、NOGマウスを用いた本実験のほか、脊髄損傷の移植治療にも応用可能であり、今後ヒトの神経疾患治療に応用されていく可能性がある大きな成果と言える。
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