2010 Fiscal Year Annual Research Report
確率的動学的一般均衡モデルにおける均衡経路の安定性と比較動学に関する特徴づけ
Project/Area Number |
10J05832
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 健治 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 確率的動学的均衡モデル / 定常性 / エルゴードカオス / ビジネスサイクル |
Research Abstract |
動学的最適成長モデルのサポート価格の大域的な特徴付けに関する結果をまとめ,国際学術誌(Macroeconomic Dynamics)への条件付き採録通知を受け,現在改訂中である.当該論文では,サポート価格の有界性を導出し,価値のパラメータに対する連続性を保証するための十分条件を与える.これは,定常均衡解の安定性にまつわるターンパイク定理の証明に欠かせないものである.また,定常均衡解の安定性およびサポート価格の有界性が保証されるため,数値手法を適用する上で意義が大きい.以上は,Yano(1989)が開発した確率的動学モデルと決定論的動学モデルの変換手法を拡張することで得られた. 関連する研究分野として,経済成長モデルの均衡経路がエルゴードカオスと呼ばれる複雑な挙動を示すための十分条件を示した.エルゴードカオスは,決定論的なダイナミクスが長期的には定常確率過程と同様の振る舞いを示すことを意味し,確率的な成長モデルの定常状態に対応する.経済学の分野では,Lasota-Yorke-Kowalskiによる拡大性(最適資本蓄積関数の傾きの絶対値が1より大きい)の条件が広く用いられ,ビジネスサイクルの説明に広く利用されてきた.しかしながら,拡大性の仮定は経済学の応用にとっては望ましいものではなく,非拡大的な最適関数への拡張が望まれていた.昨年度,矢野誠教授との共同研究で示した結果は,反復拡大的な単峰形写像がエルゴードカオスを生成することを保証する.これをもとに,Matsuyama(1999)やYano and Furukawa (2011)の成長モデルや,資本財が耐久財であるような2部門最適資本蓄積モデルが複雑なビジネスサイクルを生じることを示した.
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