2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J05836
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松岡 健太 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銀河 / 巨大ブラックホール / 共進化 / クェーサー / 化学進化 / 重元素量 |
Research Abstract |
銀河はその中心に太陽の1億倍もの質量を伴う巨大ブラックホールを持つことが知られており、この巨大ブラックホール(巨大BH)と銀河の質量の間には非常に明瞭な相関があることが近年の研究によってわかってきました(マゴリアン関係)。これは銀河と巨大BHが互いに影響を及ぼし合いながら進化してきたこと(銀河と巨大BHの共進化)を示唆する極めて重要な結果で、本研究計画における主たるテーマです。昨年度は銀河と巨大BHがいったいどのように進化してきたのかを調べるために、『大質量銀河(クェーサー天体)における光度-重元素量関係の物理的起源の解明』という研究計画を進めていきました。クェーサー天体の光度(巨大BHの質量とガスの降着率によって決まる観測量)と重元素量の間には正の相関があることが過去の研究によって知られています。しかしながら、この関係の物理的な起源はいったい何なのか、すなわち、巨大BHの質量と重元素量の関係なのか降着率と重元素量の関係なのかという部分は未だ解き明かされていない問題でした。今回、私はSloan Digital Sky Surveyで見つかった今から約110億年前のクェーサー天体(約2400天体)の分光データを用いることで、巨大BHの質量、降着率、及び重元素量の測定を行いました。それぞれの物理量を比較した結果、光度-重光素量関係の物理的起源は巨大BHの質量-重元素量関係であることがわかりました。これは、約110億年前(宇宙年齢は137億年)の宇宙において銀河と巨大BHの質量の間に既に明瞭な相関が存在していたことを示唆する結果です。つまり、宇宙初期の非常に短い期間に銀河と巨大BHが相互作用して現在のマゴリアン関係を築いたことを意味しています。この研究結果はヨーロッパの代表的な天文学・天体物理学分野の論文誌「Astronomy & Astrophysics」に掲載されました(Matsuoka et al. 2011, A & A, 527, A100)。
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