2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J05836
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松岡 健太 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銀河 / 巨大ブラックホール / 共進化 / クェーサー / 化学進化 / 重元素量 |
Research Abstract |
銀河はその中心に太陽のおよそ1億倍もの質量に達する巨大ブラックホールを持つことが知られており、この巨大ブラックホールと銀河の質量の間には非常に明瞭な相関があることが近年の研究によって明らかにされました(マゴリアン関係)。これは、銀河と巨大ブラックホールが互いに影響を及ぼし合いながら進化してきたことを示唆する極めて重要な結果です。私はこの銀河と巨大ブラックホールの共進化の謎に迫るために、平成23年度において以下のような研究を進めていきました。まず、私は「高赤方偏移中質量銀河(クェーサー天体)における銀河と巨大ブラックホールの共進化」という研究計画を進めてきました。本研究は数物連携宇宙研究機構(IPMU)に所属しているJohn Silverman氏との共同研究によって推進しているもので、COSMOS(Cosmic Evolution Survey)天域やCDF-S(Chandra Deep Field-South)天域等で見つかった中光度クェーサー天体の大規模分光観測によって進めています。これにより、これまで調査が困難であった遠方宇宙における中光度クェーサーのバルマー線を用いた巨大ブラックホールの質量及び質量降着率の測定が可能になりました。中質量銀河は大質量銀河と比べてこの宇宙での過半数を占めており、本研究によって、この宇宙における銀河と巨大ブラックホールの共進化の普遍的な姿をこれまでにない精度で調べることができます。私はこの大規模分光観測によって得られた莫大な観測データの解析を終え、巨大ブラックホール質量と質量降着率の測定を完了しました。現在、このデータセットを用いた遠方宇宙における中光度クェーサーの共進化について調査を進めています(論文誌『Astrophysics Journal』への投稿に向けて準備中)。また、巨大ブラックホールの成長と星形成活動の関係を調べるために窒素輝線が異常に強いクェーサー(N-loudクェーサー)に着目した研究も同時に進めています。N-loudクェーサーは巨大ブラックホールへの質量降着率が高い、すなわち巨大ブラックホールが激しく成長している天体です。N-10udクェーサーが示す窒素輝線強度の異常な強さは、中質量星からの窒素元素を豊富に含む質量放出によるものだと考えられます。つまり、N-loudクェーサーは中質量星からの質量放出が、巨大ブラックホールへの質量降着率の上昇に繋がっていることを示しています。巨大ブラックホール成長と星形成活動の関係性を明らかにすることは、銀河と巨大ブラックホールの共進化の理解にも繋がる極めて重要であり、つまりN-loudクェーサーの詳細な研究は必要不可欠です。私はこのN-loudクェーサーの物理状態を調べるために、すばる望遠鏡やチリ欄にある新技術望遠鏡(NTT)を用いた分光観測を行いました。現在、これらのデータ解析を進めているところです。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の中で予定していた、「最遠方電波銀河の化学的特性」に関する論文投稿は完了し、COSMOS天域等の低光度クェーサーに着目した「小質量銀河における銀河と巨大ブラックホールの共進化」に関する研究も現在順調に成果を出してきている。この研究成果は当初予定していた国際研究会COSMOS team meeting等で発表し、現在論文投稿に向けて準備中である。さらに、これらに加えて窒素輝線が異常に強いクェーサーに着目した、「巨大ブラックホールの成長と星形成活動の関係性」についての研究も進めており、当初の研究計画以上に本研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
低光度クェーサーを用いた小質量銀河における銀河と巨大ブラックホールの共進化に関する研究成果、また窒素輝線が異常に強いクェーサーによる巨大ブラックホールの成長と星形成活動の関係に関する研究成果を今後まとめ、最終的に論文投稿を予定している。特に研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は無く、共同研究者との議論等を主に進めていくことで本研究を遂行していく予定である。
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