2011 Fiscal Year Annual Research Report
In-cell NMRによる生細胞内蛋白質の分子動態解析法の研究
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10J05888
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
濱津 順平 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | In-cell NMR / 蛋白質 / ダイナミクス / Relaxation / 立体構造 / Sf9 |
Research Abstract |
(1)異種核多次元NMR法をもちいた生細胞内蛋白質のダイナミクス解析 これまでにin-cell MWRにより生きた大腸菌細胞内におけるTTHA1718蛋白質の^<15>N-T_1,T_2緩和時間が単離・精製した蛋白質試料に比べ大きく異なることを明らかにした.そこで,生きた細胞内におけるTTHA1718蛋白質に見られた^<15>N-T_1,T_2緩和時間の変化が,細胞内においては普遍的にみられる現象であるかを検証するため,連鎖球菌由来protein G B1ドメイン(G B1)を目的蛋白質とし,TTHA1718蛋白質と同様に大腸菌細胞内試料および単離・精製試料を調製し^<15>N-T_1,T_2緩和時間の測定を行った.単離・精製試料および大腸菌細胞内試料から得られたデータを比較したところ,大腸菌細胞内においてはTTHA1718蛋白質同様にT_1緩和時間が伸長,T_2緩和時間が顕著に短縮されていることが明らかになった.今後はヒト培養細胞を用いたin-cell NMRおよび本研究(2)で開発を行っているsf9細胞を利用したin-cell NMRにより,真核細胞内における蛋白質の動態解析を行い,大腸菌細胞内との差異の検証を行なう. (2)真核細胞蛋白質大量発現系をもちいたin-cell NMR測定法の確立 これまでの研究において,sf9細胞を利用したin-cell NMRによりTTHA1718蛋白質について2D^1H-^<15>N HSQC測定に成功したことを報告した.しかし同時に非常に強いバックグラウンドのシグナルが観測され,目的蛋白質由来のNMRシグナルを解析する上では妨げとなることが考えられることから,さらなる試料調製法の最適化が必要である.そこで目的蛋白質を選択的に安定同位体標識するため,バキュロウイルスによりsf9細胞内に蛋白質を発現させる際,目的蛋白質の発現はウイルス感染後期に顕著となることに着目した.従来法では,ウイルス感染と同時に安定同位体標識用培地に交換し培養を行っていたが,安定同位体標識用培地への交換のタイミングをウイルス感染後一定時間後に変更し,さらに培養を行った細胞を測定試料とした.その結果,目的蛋白質由来のNMRシグナルにほとんど影響を与えることなく,バックグラウンドのシグナルを減弱させることに成功した.今後はこの手法により試料を調製し,3次元3重共鳴MRスペクトルの測定を行い,真核細胞内における蛋白質の立体構造解析を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)異種核多次元NMR法を用いた生細胞内蛋白質のダイナミクス解析では,これまで研究を進めてきたTTHA1718蛋白質に加え,protein G B1ドメインについても動的性質の詳細な解析を行った.(2)真核細胞蛋白質大量発現系をもちいたin-cell NMR測定法の確立では,試料調製法の最適化によりスペクトルの質に著しい改善が見られた.以上の成果から(2)が妥当であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)異種核多次元NMR法を用いた生細胞内蛋白質のダイナミクス解析 ヒト培養細胞を用いたin-cell MRおよび本研究(2)で開発を行っているsf9細胞を利用したin-cell MRにより,真核細胞内における蛋白質の動態解析を行い,大腸菌細胞内との差異の検証を行なう. (2)真核細胞蛋白質大量発現系をもちいたin-cellNMR測定法の確立 均一に^<13>C/^<15>N標識を施した測定試料を調製し,3次元3重共鳴NMRスペクトルの測定を行う.得られたスペクトルの解析を行い,蛋白質主鎖および側鎖シグナルの帰属を行う.アミノ酸選択的^<15>N標識試料を調製し,^<15>N T_1,T_2緩和測定を行う.
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