2010 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の浸潤能獲得に関わる因子の分子機構の解明と診断・治療への応用
Project/Area Number |
10J06035
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
波多野 寛子 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 口腔癌 / IFITM1 / RHAMM |
Research Abstract |
高い浸潤能を有する口腔癌では、IFNによって誘導されるIFITM1の発現が亢進している。しかし、癌進展の制御を考えたとき、浸潤能だけでなく、浸潤・転移先での増殖能をいかに抑制するかが非常に重要な問題となる。 癌の浸潤巣では炎症反応が亢進し、IFNが過剰に発現しているという報告は散見されるが、その直接的な増殖能の亢進については不明な点が多い。B細胞においてIFNによりRHAMMが誘導されて増殖能が亢進するという文献があり、口腔癌でもRHAMMが高率に発現亢進していた。IFITM1が癌の浸潤に寄与する因子とすると、RHAMMはその増殖に寄与する因子と考えられた。そこで顎顔面において、特に増殖能の亢進のみが著しい腫瘍、骨形成線維腫について検討を行うことにした。骨形成線維腫は硬組織の形成を伴い、線維性組織が腫瘍性に増殖する病変である。手術標本より培養した細胞を不死化させ、細胞株を樹立、マイクロアレイにて正常顎骨骨芽細胞と遺伝子発現を比較したところ、RHAMMが高発現していることを見出した。そこで、siRNAを用いてRHAMMをノックダウンしたところ、細胞増殖は抑制され、細胞周期G2/M期への進行も抑制された。また、RHAMMはERK1/2と相互作用し、ヒアルロン酸添加により誘導されるERK1/2のリン酸化に必要であることが明らかとなった。今回の研究で、RHAMMはERK1/2と相互作用することにより,細胞増殖に重要な役割を担っている可能性が示唆された。 RHAMMは、口腔癌をはじめとする顎顔面の各種腫瘍の増殖因子と考えられ、臨床的に診断に応用できるだけでなく、治療ターゲットとして期待できる。
|