2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会不安を中心とする精神病理傾向の高次-低次認知の相互作用の解明と介入
Project/Area Number |
10J06078
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
守谷 順 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 不安 / 注意 / ワーキングメモリ / 表情 / 情動 |
Research Abstract |
本年度は,高次認知機能の1つであるワーキングメモリと注意の相互作用が不安に与える影響について検討すべく,その基礎的なメカニズムについて調べた。 先行研究より,生物はワーキングメモリとして一時的に保持されている情報に注意を向けやすいことが明らかになっている。しかし,保持されている情動情報が注意に与える影響については検討されていない。情動情報の記憶が注意に与える影響について検討することは,不安の注意研究にとって非常に重要である。近年,注意を操作することで高不安者の不安を低減する手法の効果が示されてきているが,注意の操作法については未だ十分な検討がなされていない。情動情報の記憶が注意に及ぼす効果について明らかにあれば,効果的な注意訓練法を提案することが可能となると考える。 実験では,具体的には実験参加者に怒り表情もしくは喜び表情を各試行で記憶してもらい,記憶している間に表情刺激の視覚探索課題を行ってもらった。結果,記憶している表情と同じ表情が提示されると,より効率的にその表情から注意を離すことができる可能性が示された。例えば怒り表情を記憶すると,記憶している間は怒り表情が提示されてもすぐに違う刺激に注意を移動することができる。記憶することが重要な役割を果たしており,実験参加者に表情を記憶しないように指示すると上記の現象は見られなかった。 今回は情動情報として顔表情を記憶してもらったが,他の情動情報でも同様の現象が見られるか検討する必要がある。そして,不安の高低に関わらず同様の結果が得られるか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した通り,高次認知・注意機能の相互作用が不安に与える影響について十分な研究ができた。また,これらの効果が,不安ではなく,他の精神病理傾向(例えばサイコパス)に与える影響についても十分検討ができ,申請書の通り研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き高次認知と注意の交互作用と不安との関連について,その詳細なメカニズムについて明らかにすべく実験を行う予定である。また,今後は申請書に書かれている介入についても検討。この2~3年で注意訓練による不安低減の効果を示した研究が数多く出版されてきた。それらの結果および具体的な注意訓練法をレビューし,次に考えられるより効率的で効果的な注意訓練について提案する。
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