2011 Fiscal Year Annual Research Report
環状オキシムの還元的環拡大反応を用いるメルシカルピン及びシャルテリン類の合成研究
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10J06216
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩間 雄亮 東北大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Mersicarpine / 不斉全合成 / インドールアルカロイド / DIBALH / 環拡大反応 |
Research Abstract |
DIBALHを用いたオキシムの還元的環拡大反応は、医薬及び医薬候補化合物の母核として用いられる芳香族環状第二級アミンを簡便に合成できるため、医薬の短工程かつ効率的な合成を可能とし、創薬における実用的な合成法として期待される。そこで、本反応を天然物合成に応用することで、その有用性を示すこととした。今年度は、昨年度にラセミ合成を達成したmersicarpineの不斉全合成への展開に精力的に取り組んだ。 研究実施計画に従い、mersicarpineの初の触媒的不斉全合成を目指し、分子内不斉Mizoroki-Heck反応を検討した。しかし、触媒や配位子等を種々検討したが、低いエナンチオ選択性しか発現せず、この合成経路を断念した。そこで別の合成経路として、容易に大量合成可能である光学活性なケトエステルを出発原料とし、Fischerインドール合成を経てオキシムを調製した。ここで、DIBALHを作用させることで環拡大反応が進行し、目的のアゼピノインドールが得られ、ワンポットで保護することで、高収率で生成物を単離した。その後の3工程の変換により(-)-mersicarpineへと導き、文献既知のケトエステルから、6ポット9工程、総収率30%での不斉全合成を達成した。独自に開発した還元的環拡大反応によるアゼピノインドール骨格の構築を鍵反応とした独創的な合成計画に基づき、極めて効率的な不斉全合成を達成し、これまでの合成に比べ大幅な工程数の短縮と総収率の改善に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画とは異なる合成経路だが、研究の目的に示したように、天然物mersicarpineの独創的かつ効率的な不斉全合成を達成した。このことは、我々の開発したDIBALHを用いたオキシムの還元的環拡大反応が、天然物の母核である複素環化合物の効率的な合成法として有用であることを示せたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の開発したDIBALHを用いたオキシムの還元的環拡大反応の特徴の一つに、置換基の電子密度により転位をコントロールできることが挙げられる。そこで、構造的に対称性の高いオキシムの、電子密度による選択的な転位を利用した非対称化を経るアゾシン骨格の構築により、前立腺癌治療剤として期待される17β-HSD3阻害剤の効率的な合成を目指している。
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Research Products
(5 results)