2010 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミックな素子のネットワークが示す動的秩序形成
Project/Area Number |
10J06281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高口 太朗 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 意見形成ダイナミクス / ネットワーク / べき分布 |
Research Abstract |
本年度は、非ポアソン的な相互作用イベントの発生間隔が意見形成ダイナミクスに与える影響について研究を行い、その成果を学会において発表した。従来の社会現象の確率力学モデルでは、人間同士の相互作用イベントの発生はポアソン過程に従う事がしばしば仮定されていた。一方、現実のイベント発生間隔はべき分布に代表される裾野の長い分布に従う場合がある事が近年明らかとなってきた。時間当たりのペアごとのイベント発生回数をそのペアの結合強度とすれば、非ポアソン的イベント発生は結合強度の動的な変化とみなせる。この非ポアソン性が意見形成モデルにおける意見統一の達成時間(コンセンサス時間)に与える影響に注目し、主に数値シミュレーションを用い解析を行った。モデルは意見形成ダイナミクスの代表例である投票者モデルを用いた。エージェント間の結合構造はリング・完全グラフ・多重リングの3通りを設定した。その結合構造の上でイベント発生時間間隔がべき的な分布に従う場合を従来の指数分布に従う場合と比較した。数値シミュレーションの結果、以下の3点が明らかとなった。1.リングの場合、非ポアソン性によりコンセンサス時間は長くなる。2.完全グラフの場合、2種類のイベント発生間隔分布でコンセンサス時間はほぼ同じである。3.多重リングの場合、次数が小さいときには非ポアソン性によりコンセンサス時間は長くなり、次数がある程度大きいときには2つのイベント間隔分布でコンセンサス時間は同等となる。今回の研究結果では、非ポアソン的な相互作用イベント発生間隔によるダイナミクスを遅くする効果はエージェント間の結合構造に依存するという点が先行研究にはない新たな知見である。
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