2011 Fiscal Year Annual Research Report
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10J06340
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
木島 隆之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 集団遺伝学 / トランスポゾン |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続きトランスポゾンの配列を考慮したシミュレーションプログラムの結果をもとに、トランスポゾンのコピー数動態とトランスポゾンの配列の進化動態の関係を研究した。前回報告した、トランスポゾンのコピー数に対する負の選択挿入位置による負の選択との力関係や負の選択が高いほどコピー数は少なくなるが、逆に活性の高いコピーが多く占めるといったコピー数動態と選択との関係、トランスポゾン配列の塩基置換率による活性の変化率が大きいほどコピー数が変動しやすいという結果を得た。前回報告したトランスポゾンの欠失率との関係も見られたが、変化率との関係ほど強い相関は見られなかった。またこのデータ群に対して、トランスポゾン全配列を用いた系譜および非同義置換率(Dn)と同義置換率(Ds)の比(Dn/Ds比)の解析を行った。系譜の枝長はその時点でのトランスポゾン集団の活性の構成を反映することが示された。コピー数動態との関係も見られ、コピー数が少ない場合、すなわちトランスポゾンに対する負の選択が強い時、系譜の形状は最初の配列を中心に星型となる傾向が見られ、コピー数が多い場合はそれぞれの枝長は活性を反映するために、全体的に渦を巻く様な形状がとなる傾向が見られた。さらにDn/Ds比においても、枝長とDn/Ds比との間に負の相関が見られた。ただし、コピー数が増加している場合では正の相関が見られる点もあり、コピー数動態の影響を少なからず受けていることが示された。以上の結果を論文としてまとめ、遺伝学分野のトップジャーナルであるGenetics誌に投稿するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シミュレーションプログラム中に致命的なバグが見つかり、プログラムの修正及び再度シミュレーション・データ解析をやり直したため。
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Strategy for Future Research Activity |
すべてのコピーが転移を行えるトランスポゾンモデル(本研究では転移活性を有するものだけ転移を行う)に従うシミュレーションプログラムでも少数のマスタージーンまたはソースジーンのみが転移を行えるマスター/ソースジーンモデルに似た動態を示すことを示唆している。しかし、塩基置換率のみを基にした転移時期、特に一時期に多くのトランスポゾンが転移を行った時期(トランスポジション・バーストの時期)の推定には、変異を蓄積しながらコピー数が増加していくためにごさが生じることになる。この点に関してシミュレーションプログラムから得られたデータ群を用いて、統計学的に補正方法を提案するために解析を行っている。また、転移活性やゲノム中のトランスポゾンの挿入位置の分布などからマスター/ソースジーンとなりうる配列の特徴の解析も行なっている。さらに、本研究でのモデルは一種の生物集団を仮定しているが、この集団が分集団化(または種分化)した場合の配列の進化動態に関しても見る必要があるため、シミュレーションプログラムを改正している。
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