2010 Fiscal Year Annual Research Report
microRNA複合体形成経路の解析とそれに基づく標的の生化学的同定
Project/Area Number |
10J06426
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀江 朋子 (川俣 朋子) 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | small RNA / micro RNA / RISC / Argonaute |
Research Abstract |
microRNAは、内在性の小さなRNAで,RISCを介して標的mRNAと結合することで、その標的自身の翻訳を抑制する。RISCの中で最も重要な機能を担う分子は、Argonauteタンパク質(Ago)である。miRNAの真の標的mRNAを同定するためには、AgoがmiRNA二本鎖を取り込み、標的mRNAを認識するまでの各素過程について、small RNAの構造とAgoの構造の両面から解析し、生化学的な特性を明らかにすることが不可欠である。今年度は主に、1)miRNA/miRNA*鎖の選別機構について、また、2)miRNAによる標的認識機構について、申請者が開発してきたネイティブゲルシステムを利用して解析してきた。 その結果、miRNA鎖の持つ5'リン酸基は、miRNA/miRNA*二本鎖がAgoへの取り込まれるために決定的な役割を果たすことを明らかにした。また、天然に存在するmiRNAの最初の塩基は、大部分(90%程度)がUに偏っていることが示されている。そこで、5'末端のnucleotideの配列をU,A,G,Cに変化させたmiRNA/miRNA*を用いて、RISC形成能を比較した。その結果、5'末端がUである場合は、RISCへの取り込み段階と、その後の一本鎖化の両方の過程を促進した。5'Aの場合は、5'Uより効率は低下した。しかし、5'末端がG,Cの場合は、5'リン酸基があっても、miRNA/miRNA*の内部にミスマッチ(seed領域(miRNA鎖の2-8番目)と、3'-mid領域(13-16番目))が存在すると、Agoに取り込まれるにも関わらず、一本鎖化の過程でAgoから排除された。従って、5'末端の塩基の違いは、miRNA/miRNA*のもつ内部構造(ミスマッチの位置)とのバランスによって、Agoへの取り込み過程と、その後の一本鎖化の過程に明確な影響を与えることが明らかになった。上記の結果は、これまで解析されたAgoの結晶構造解析の結果と矛盾を生じない。よって、miRNA経路は天然のmiRNAを最大限効率的に利用するために最適化されていて、それはAgoの生化学的特性に由来することが推測された。
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Research Products
(2 results)