2011 Fiscal Year Annual Research Report
microRNA経路の解析とそれに基づく標的の生化学的同定
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10J06426
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀江 朋子 (川俣 朋子) 東京工業大学, フロンティア研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | small RNA / micro RNA / RISC / Argonaute |
Research Abstract |
microRNAは、内在性の小さなRNAで,RISCを介して標的mRNAと結合することで、その標的自身の翻訳を抑制する。RISCの中で最も重要な機能を担う分子は、Argonaute タンパク質(Ago)である。miRNAの真の標的mRNAを同定するためには、AgoがmiRNA二本鎖を取り込み、標的mRNAを認識するまでの各素過程について、small RNAの構造とAgoの構造の両面から解析し、生化学的な特性を明らかにすることが不可欠である。今年度は主に、1)miRNA/miRNA*鎖の選別機構について、また、2)miRNAによる標的認識機構について、申請者が開発してきたネイティブゲルシステムを利用して解析してきた。 1)について、miRNA鎖の持つ5'リン酸基は、miRNA/miRNA*二本鎖がAgoへの取り込まれるために決定的な役割を果たすことを明らかにした。また、天然に存在するmiRNAの最初の塩基は、大部分(90%程度)がUに偏っていることが示されている。5'末端の塩基の違いは、miRNA/miRNA*のもつ内部構造(ミスマッチの位置)とのバランスによって、Agoへの取り込み過程と、その後の一本鎖化の過程に明確な影響を与えることが明らかになった。上記の結果は、これまで解析されたAgoの結晶構造解析の結果と矛盾を生じない。よって、miRNA経路は天然のmiRNAを最大限効率的に利用するために最適化されていて、それはAgoの生化学的特性に由来することが推測された。2)については、前年度までにマウスの臓器等をもちいて、モデルとして設定したmiRNAの標的の同定を試みたが、成功していない。その理由は、Agoの生化学的な特性、すなわち再構成系を利用すると、Agoが非特異的にRNAに結合してしまうことが計画していた実験に適合しなかったことに加え、実験機器等の環境が整わないこと、合成RNAが高価なことなどが理由として考えられる。そこで、新たな課題を設定し取り組むことにした。現在、オートファジーとよばれる細胞内分解経路の誘導・進行過程を、代謝という観点から解析している。核酸やアミノ酸などの量を定量するとともに、生化学的・細胞生物的実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの課題、miRNA/miRNA*鎖の選別機構・miRNAによる標的認識機構のうち、前者は適切な生化学的な系が整ったことにより、比較的早く仕事が進行し、速やかに論文としてまとめることができたが、後者は逆に、Agoタンパク質が非特異的にRNAに結合してしまう性質をもつことが判明し、条件検討等の試行錯誤をしても全く改善しなかったことから、計画していた実験が当初の予定のままではほぼ不可能でることが予想された。
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Strategy for Future Research Activity |
11.現在までの達成度に記載したとおり、課題のうち一つは研究を推進するためには多くの障害があることが分かった。そのため、新たな課題にとりくむこととした。 miRNAはRNase様の酵素複合体とともに標的mRNAを配列依存的に分解する機構であるが、RNAの分解経路は、他にも複数存在する。そのうちの一つがオートファジーであると考えられている。そこで、今後はオートファジーの誘導・進行過程を、代謝という観点から解析するという全く新しい課題に挑戦している。
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