2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J06613
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
野口 尚子 (入江 尚子) 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 数量認知システム / アジアゾウ / タッチパネル |
Research Abstract |
【研究の具体的内容】 上野動物園においてタッチパネルを用いた実験を実施した。6月より3頭のゾウでトレーニングを行なったところ、うち1頭がタッチパネル装置の操作方法を習得したため、そのゾウで実験を行なった。実験内容は、画面に異なる数のアイテムが描かれた2つの図を提示し、アイテム数(0~10)が多い図を選択するという相対的数量判断課題を行なった。その結果、ゾウの弁別成績は提示されたアイテム数の差や総量の影響を受けないことが示された。他の動物種の弁別成績はこれら2要因の影響を受けることが知られており、ゾウの数量認知メカニズムが他の動物種と異なる可能性が示唆された。さらに、ゾウの回答時間を測定したところ、アイテム数の差が小さい課題ほど回答するのに長い時間がかかることが示された。このことは、ゾウの数量認知システムがヒトのものと類似する可能性を示唆する。 【研究の重要性と意義】 本研究により、アジアゾウが他種と異なる数量認知システムを進化させてきた可能性が示唆された。このような動物種はヒトを除いてまだ報告されていない。今後、ゾウの実験結果とヒトの結果を比較検討することで、ヒトの数量認知システムがどのように進化してきたのかを解明することができると考えている。 また、ゾウで使用できるタッチパネル装置の開発により、今後、ゾウや他の大型哺乳類を対象とした認知実験が可能となり、霊長類以外の動物の認知研究に大きく貢献できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タッチパネルの開発など、準備に予想以上の時間がかかってしまったが、実験実施およびデータ収集については想定していた期限内に終えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果をまとめ、早急に論文の投稿を目指す。また、動物園(研究実施機関)と相談し、タッチパネルを用いた追試実験の実施を検討する。
|