2011 Fiscal Year Annual Research Report
臨床応用に向けたiPS細胞由来心筋系列細胞の蛍光化合物による新規純化法の開発
Project/Area Number |
10J06630
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 弘之 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ES細胞 / iPS細胞 / 分化誘導 / 心筋細胞 / 純化方法 / ケミカルバイオロジー |
Research Abstract |
多能性幹細胞である胚性幹細胞(ESC)と人工多能性幹細胞(iPS)は、特定の培養条件下で心筋細胞に分化し、移植において重要な細胞ソースになる可能性がある。将来的に、心筋・心筋前駆細胞移植療法は、重症心不全患者に対し有効な治療法となる可能性がある。しかしながら、細胞移植治療において、低い心筋分化誘導効率、未分化細胞の混入によるテラトーマ形成などの問題があり、臨床応用に適した心筋細胞の分化・純化方法の開発が必要である。本研究では、ケミカルバイオロジーの手法を用いて、ヒト心筋系列細胞(心筋及び心筋前駆細胞)の細胞膜表面あるいは細胞内分子を特異的に標識する蛍光化合物を同定し、新たな心筋系列細胞同定・純化方法の開発を行う。 前年度は、本研究室にワシントン大学Laflamme囲准教授が報告したヒトES細胞からの心筋分化誘導法(Nat Biotechnol, 2007)を導入し、いくらかの改善によって、ヒト心筋細胞を効率的かつ大量に調整することが可能となった。この分化誘導法を応用したスクリーニング系を構築した。構築したスクリーニング系のFeasibilityを検証するため、まずはヒト心筋細胞の表面抗原を特異的に認識する抗体の探索を行った。約250種類のヒト細胞表面抗原抗体を用いて、各ヒト表面抗原抗体と心筋特異的収縮タンパク質であるcTnTと共染色を行った。共染色した細胞群はFACSを用いて解析を行い、ライブラリ中のVCAM1(Vascular cell adhesion molecule 1)抗体のみが、特異的に心筋細胞を標識することを見出した(Uosaki H, PLosOne, 2011)。またヒト心筋細胞の特異的表面抗原が同定できたことにより、細胞の遺伝子改変なしに高純度・高効率で大量の生きたヒト心筋細胞の調整が可能となった。 次年度はこの成果をもとに実際に蛍光化合物のスクリーニングを実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に導入したヒトES・iPS細胞からの心筋分化誘導法は、いくらかの改善を加えることによって、ヒト心筋細胞を効率的かつ大量に調整することが可能である。この分化誘導法を応用して構築したスクリーニング系は、これまで明らかにされていなかったヒト心筋細胞を特異的に認識する表面抗原の同定を可能にした。このスクリーニグにより、心筋細胞の特異的表面抗原の1つとして、VCAM1(Vascular cell adhesion molecule 1)が同定した。特異的表面抗の同定により、細胞の遺伝子改変なしに高純度・高効率で大量の生きた心筋細胞の調整が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた特異的表面抗原のスクリーニングは、これまで明らかにされていなかったヒト心筋細胞の特異的表面抗原の1つとして、VCAM1(Vascular cell adhesion molecule 1)を同定した。特異的表面抗の同定により、細胞の遺伝子改変なしに高純度・高効率で大量の生きた心筋細胞の調整が可能となった。純化法として抗体を用いているため、操作の煩雑さ、1回の純化に掛かるコストなど臨床応用に向けて解決すべき課題が残されている。次年度はこの成果をもとに、VCAM1を指標に用いることによって、効率的に蛍光化合物のスクリーニングを遂行する予定である。
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